社会・経済・テクノロジー・デザインを俯瞰していて説得力あります。
悲観的だったり教訓的だったりすることなく、現状を観察して、捉え直して、再考して、よりよい状況へ向かうための予測になっていると思います。
知りませんでしたが、2019年には日本にもFjordのスタジオができたそうです。

以下は気なった箇所を抜粋した意訳です。間違っているかもしれません。

■Many faces of growth(多面的な成長)
企業の「成長」を定義し直す傾向を予測しています。
「顧客価値」「従業員への投資」「株主価値の提供」よりも「多様性と包括性」の育成が第一義になりつつあるそうです。
それは顧客にも従業員にも株主にも適用されるテーマであり、多様なステークホルダーとのさまざまな価値の「成長」を測るための指標が必要になるそうです。

■Money changers(お金が変わる)
お金の体験が変化しています。ここには多くの新製品と新サービスの機会が生み出されます。
指紋や顔認証の支払い、レジのない小売店、Apple Card などの環境で新しいユーザーエクスペリエンスが提供されつつあるそうです。

■Walking barcodes(5Gの普及と身体による認証)
顔、指紋、網膜などがデジタルで読み取られるようになって、私たちの身体は私たちのシグネチャー(認証)になりつつあります。
ここにはプライバシーやセキュリティの問題もあります。
2020年以降の5Gの普及を背景にして、これらを利用したインターフェイスを再考する必要があるそうです。

■Liquid people(流動的な人々)
消費者や従業員の要望やニーズは流動的になるそうです。
健康、精神衛生、ウェルビーイング、気候変動などへの関心の高まりを背景にした彼らの文脈を理解して、彼らの価値観をサポートする消費体験が望まれているそうです。
さらには、「顧客」「従業員」の枠を超えて製品・サービスを再考することが提案されています。

■Designing intelligence(AIとのコラボレーション)
企業のAI導入が自動化のステージから人間とのコラボレーションへ進むそうです。
AIはシミュレーションや意思決定支援などのより複雑な活動に適用されるようになりイノベーションを加速します。
AIを戦略的な意思決定プロセスにどのように組み込むことができるか。
AIと人間はどのように分担できるのか。
AIと人間のインターフェイスはどのようにデザインされるのか・・・。

■Digital doubles(データ上の人格)
新しい「エージェント・サービス」としてのデジタル上の別人格を、ユーザー自身が管理するようになるそうです。
(これについては、意味するところがよくわかりませんでした。)

■Life-centered design(すべての生物の デザイン)
ユーザー センタード デザインは利己的になりすぎていて、デザインの重点を切り替える必要があるそうです。
すべてが何らかの形で他のすべてに影響します。デザインはその影響を考慮する必要があります。
口先だけでなく、すべての分野で「害を及ぼさない」ようにしてください。

昨年と同様に、デザインの取り扱うテーマの領域拡大と、デザインの及ぼす影響範囲の認識についてのメッセージが見てとれます。
昨年に比べると、企業寄りで現実的な予測になった気がします。Fjordというよりもアクセンチュアの色合いが濃くなった感じ。

Fjord Trends 2020 >>

【関連記事】より良い未来のためのデザイントレンド予測『Fjord Trends 2019』

2020年1月8日 デザイン

OplusA

Studio O+A は有名テック企業のオフィスを手掛けてきたインテリアデザイン会社。その共同創業者Verda Alexanderの記事です。
この記事はオフィス・デザインだけでなく、SNS後のあらゆる分野のデザインについての課題のように思います。
Studio O+Aではプロジェクトを始めるときに、最初にPinterrestやInstagramのような画像サイトを参照しないようにデザイナーに通達されるそうです。
「他人のデザインを参照し続けていると、変化が少なくなります。少しでも新しいものを探し求めるべきです。」とのことです。

インターネットによってデザインは洗練されたと O+Aの共同創業者Verda Alexanderは語ってます。

「インスタ映え」するオフィスは、その企業とそこで働く人を魅力的に見せます。
そういうオフィスをデザインすることはクライアントの賛同を得やすくして予算を最大化させる健全な戦略だそうです。
その一方で、インスタ映えのような「一瞬の魅力」のデザインがエスカレートすることを危惧しているようです。

「私たちがデザインしている空間は「瞬間」ではありません。そこは従業員が日々を過ごす場所です。デザイナーとして、私たちは次のことを自問しなければなりません。私たちは美しく機能的な空間を作り出していますか?それとも単にインスタ映えする「瞬間」を作り出していますか?」

「2013年に私たちが取り組んだプロジェクトにおいて、いくつかの見落としていたことがありました。ベルベットやゴールドミラーなどの魅惑的なデザインのエリアがありましたが、労働者が実際に日々を過ごす職場の大部分は灰色で無地でした。これは、設計者が重要な領域、つまりエントランスや目に見える共有スペースに努力を集中することで予算を最大化させる戦略です。それは健全な戦略であり、長年にわたって私たちにとってうまく機能しました。また、クライアントの賛同を得やすくなります。クライアントは、これらの瞬間の1つに興奮し、プロジェクト全体を青信号にします。」

「環境に配慮したオフィスを志向する企業は、デザインの瞬間は最優先事項ではないと判断しています。」

「SNSやブログを見るのはデザイナーだけではありません。クライアントとその従業員も見ています。・・・私たちのクライアントは時々既存の期待を持っています。時には彼らはすでに自分の頭の中にオフィスをデザインしています。彼らは他のどこかで見たものを好むかもしれません。それは、そのクライアントの問題解決と、ユニークな文化を伝えることを目的としたデザインプロセスを混乱させます。」

「Studio O + Aに最初に真剣な注目を集めたプロジェクトを覚えています。これはパロアルトにあるFacebookの最初の本社であり、2010年に完成しました。・・・(Facebookオフィスをデザインしたおもしろい紆余曲折のエピソードがあって)・・・同じ年に立ち上げられたInstagramで他のデザイナーがデザインしているものをキャッチ・アップすることがなかったので、私たちはクライアントと一緒にその旅をすることができました。写真を作成するつもりはありませんでした。」

この儚い「一瞬」のための要望に答えることが、デザイナーを追い込んでいるような気がしています。
デザインのプロセスをショートカットして作られた一瞬の「映え」がのために、デザインの価値やモラルが低下していないか検証する方法があるといいかも。

元記事はこちら
Is designing for Instagram hurting design? | FastCo >>

Studio O+A >>

2019年10月15日 デザイン

Web Design_The Evolution of the Digital World 1990 – Today_001

Web Design_The Evolution of the Digital World 1990 – Today_001

30年間のビジュアルの旅の記録。ユーザーエクスペリエンス、ユーザビリティ、技術的なマイルストーンなどが、現在のインターネットにどのようにつながるのかを年ごとに紹介してるようです。

最初のドラッグ&ドロップナビゲーション。
最初のページめくりインターフェイス。
最初にシームレスに動画利用。
最初のバイラル。
最初のパララックス。
最初のYouTubeっぽいサイト。
・・・・など。

長くウェブの仕事をしてるのでノスタルジーとして楽しめますが、未知の領域でデザインしようとしたデザイナーたちの創造性を見ることもできるかも。

ここ数年のインターンシップや新人研修の話を聞くと、今の大学生はWEBやITをおもしろい仕事だとは思っていないようで「そうかもな・・・」と思うところがあります。

元記事はこちら
Looking back to the history of the web, Rob Ford selects five landmark sites from the last 30 years | It’s Nice That >>

Web Design. The Evolution of the Digital World 1990–Today >>

2019年9月12日 デザイン

イケてる企業のオフィス空間では、まずはフリーの食事があるダイニングルームを設けるようになったそうです。つづいて、遊び道具を置いたリビングルームを設けた。ランドリーを設けて、自分の自転車をメンテナンスするスペースも設けた。自分のスペースを自分で自由に設置できるようにもした。

本当にそんな設備が必要なのか?
自宅に帰って寛ぐこと、オフィスから離れることのほうが創造性と生産性に寄与するのでは?

そこで考えられたのが、適切な摩擦(フリクション)が設計されたオフィス空間だそうです。
その摩擦は強すぎても弱すぎてもダメで、適度であることが大切だそうです。

その摩擦は、下記の3つに分類されるそうです。

たたみこみ(Convolution)」これは数学用語で、一定の負荷といった意味のようです。
物事をスローダウンさせるための制御のようなもののようです。
「たたみこみ」は、私たちがしていることに気付くように働きます。それは私たちを遅くします。

「革命(Revolution)」は私たちにスピードアップさせるようなもののようです。
「革命」は私たちに自信を持たせること。「たたみこみ」とは異なり、それは物事をスピードアップします。

「進化(Evolution)」は私たちを拡張するものようです。
「進化」はオフィス機能の次のステップだそうです。

24h/7daysのオフィスから 8h/5days のオフィスへの転換だそうです。
まったく賛成です。

提唱しているデザイン会社はこちら
Studio O+A >><

元記事はこちら
Masha Manapov’s thoughtful illustrations deal with life’s delicate subjects >>

2019年7月18日 デザイン

Morrama Design によるユーザーの幸福を考えたスマホのコンセプトモデル

画面操作ではなくスマホ本体に対しての身体的なUIが特徴のようです。
このコンセプトはユーザーの身体的な方法でのスマホ操作によりスマホの機能やモードを簡単かつ意識的に切り替えることができるようになってるそうです。
それは「ユーザー自身のモード」がスマホ操作のために強制されることを防ぐことのようです。

Flip、Seesaw、Taper という3つのインタラクションが紹介されています。

■Flip
通話、チャット、撮影の最中に他のアプリに移動しなくてはならないときは、スマホを反転させるだけです。
ユーザーがいま行っていることをスマホの操作に邪魔されても、すぐに対応できるようにしているようです。

■Seesaw
スマホの背面が非平面になっています。
スマホを机上に置いたときには画面が傾いていて通知が非表示になっているが、スマホの片側を抑えて傾きを変えることで通知が表示されます。
ユーザーがPCで作業しているときにスマホに邪魔されないこと。ユーザーがスマホの通知を確認するときにもスマホ画面を操作しなくて済むようにしているようです。

■Taper
スマホ背面に通知と音声操作のためのサブスクリーンがあるようです。
メインスクリーンを見ないで操作できることはこのサブスクリーンで済ませるようにすることで「ユーザー自身のモード」を維持できるようです。

アップル、グーグル、サムソンで飽和状態の市場では、デザインの方向性も独占されています。
何か新しいことをするのは不可能です。
あえて、ローテクな要素を持ち込むことで機能満載のスマホに対応するコンセプトだそうです。

くわしくはこちら
Morrama Unveils Smarter Phone Concepts Developed for Wellbeing of Users >>

Morrama Design >>

2019年5月27日 デザイン

PseudoDesignTitles

他のデザイナーとは違ったデザイン職の名前がほしいデザイナーのための職種名ジェネレーターです。
職名だけでなくデザイントレンドの呼称でもあるようですが、まったくわかりません。

もちろん風刺です。どの職名にもまったく意味はありません。
デザイナーの Xtian Miller さん、 Boris Crowther さんが作ったそうです。

「完璧な幸福のための方法論デザイナー」
「一般タイポグラフィデザイナー」
「ビジュアル戦略のためイライラするデザイナー」
「インクルーシブ・キュレーター」
「思索ジェダイ」
「複合現実デザイン監視員」
「ブレインインターフェイス素人」

おもしろいです。
もう「デザイナー」ですらなかったりします。

デザインの過程が細分化されて、何をするのかわからないような職名も増えた気がしてます。

デザインのデジタル化が進むと、デザインプロセスはデザイナーが一貫してコントロールできるようになることが恩恵だったと思うのですが、デザインが産業として成長するにはプロセスが細分化されて雇用が増えることも必要だということでしょうか。

Pseudo Design Titles >>

Let this creative industry title generator choose your next job >>

2019年4月26日 デザイン

デザインは映画における主演ではなくて、助演俳優のようにあるべきだそうです。
デザイン主導のカルチャーを背景に組織内で権限を与えられたデザイナーはたやすく「俺様」になって、協力者の理解を得られないまま一緒に取り組むべき関係者を疎外する傾向があるそうです。
デザイナーはリーダーではなく優れたチームメイトであることに集中すべきだそうです。

耳に痛い話ですが、いままでの経験からしても、デザイナーの気質のようなものを考えるときに思い当たるフシがたくさんあります。

とくに開発者と協調できないデザイナーはダメだと言ってます。
デザイナーが開発者よりも強い立場になった組織のプロダクトは弱体化する傾向があるそうです。
「Beautiful industrial design means nothing when paired with poor engineering.」
だそうです。

Airbnbのデザイン責任者であるAlex Schleiferによると、
「デザイン主導の文化は他の人々の意見や洞察を無視する傾向があると考えています。デザイナーが特別な扱いを受けないようにデザイン組織を構築しました。その代わりに、製品マネージャは完全にユーザーの視点を表すことを任務としています。」
だそうです。適切な対処かも。

企業内でデザイン部門がリーダーシップを発揮すべきと主張していたジョン・マエダが、かつての自分の考え方は間違っていたと語っています。これはとても勇気ある態度だと思います。

ほかでもない、この姿勢こそがデザイナーに必要なのかも。

John Maeda: “In reality, design is not that important” >>

2019年3月29日 デザイン

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驚くような新鮮味はない感じですが、時代の雰囲気ではあると思います。
1. セリフ書体の復活
2. モノクロ配色
3. オーガニックな形
4. グリッチ
5. マイクロインタラクション
6. チャットボット
7. (さらに)ビデオコンテンツ
8. (まだ続く)ミニマリズム
9. 親指フレンドリーなナビゲーション
10. 多様性

「グリッチ」はバグっぽいピジュアルエフェクトのこと。
この映画みたいな感じのことでしょうか。
【関連記事】映画『ブレードランナー2049』のテクノロジー・イメージをデザインする テリトリー スタジオ が描く壊れた未来

「マイクロインタラクション」はユーザーの操作にちょっとしたリアクションを添えるような感じでしょうか。
個人的には「マイクロインタラクション」は「親指フレンドリー」とセットで、ポケモンのエフェクトのようなものをイメージしてます。

「チャットボット」をどのようにデザインしてユーザー体験に貢献させるかは、かなり難しそう。

そしてこれから「多様性」は日本でも重要なテーマになっていくでしょう。

個人的にここに追加するとしたら・・・
シンプルな手描きのイラストとAppleのARKit2.0が流行りそうな気がしてます。

まったく根拠はないです。

元記事はこちら
10 innovative web design trends for 2019 – 99designs >>

日本語はこちら
デザイナーが押さえておきたい、2019年のウェブデザイントレンド10個まとめ【完全ガイド】 – PhotoshopVIP >>

2018年12月17日 デザイン

この動画がただのコンセプトムービーなのか実機デモなのかわかりませんが、既存のテンプレートやサンプルから選択するのではなく、人が描くイメージを認識してアウトプットするアプローチはデザイニングにおいて画期的だと思います。

アウトプットされるコードに意味のある構造ができているわけではなさそうですが、この技術が実現したら洗練されていくのは速いでしょう。

これが実現したら、WEBデザインの一部が終わる気がします。

2018年10月1日 デザイン

designs_lost_generation

だいぶまえの記事ですが、読み応えあっておもしろいです。
アメリカのデザイン会社経営者による記事ですが、シリコンバレーからはじまった新世代のデザイナーを「失われた世代」としてUX/UIデザインの社会的責任やデザイナーの資質・役割・環境について指摘してるようです。

以下はいくつか意訳と抜粋で・・・(間違ってるかもしれません。)

「・・・私たちの世代はヒッピーに育てられて、欲望に消費されて、市場原理に支配されてきました。・・・(クライアントに対して) ”なぜ” と ”No” という言葉を使うことによって、デザイナーとしての倫理的な枠組みを構築してきました。」

「デザイナーは ”ゲートキーパー” のように、門を通って世の中に出て行く製品・サービスについての倫理的な監視役でした。」

「いまの世代のデザイナーは、より速く、より速く作業する方法を学ぶためにキャリアを費やしました。 確かにスピードは大切ですが、過剰なスピードは目的をぼかす傾向があります。 ・・・スピードと並んで、スケールの麻薬にも対処しなければならなりません。」

「私たちは、私たちを最も必要とする人々(ユーザー)を危険にさらしています。そのことにデザイン業界は責任を負おうとしていません。 この状況に ”なぜ” と ”No” という言葉を使わなくてはならないのでは?」

「”正しいことをしたいが、仕事を失うことになるだろう” という反論がよくあります。・・・倫理的枠組みは、賃金水準とは独立している必要があります。・・・仕事を失うことに対する恐怖はあなたが疑問を投げかけて挑戦すべきことに取り組む可能性を低くします。 これでは仕事をしていないのと同じことです。・・・デザイナーの失われた世代は、それを正しくすることを望んでいません。 彼らは自分たちをゲートキーパーではなく、ベルボーイだと決めたのです 。」

「私たちは危険なソフトウェアが、どのように危険なのか理解しはじめています。・・・私たちは責任を負う必要があります。私たちは速く動いて物事を壊してきました。目的に沿って壊したときもあれば、無知だったために壊したこともあります。どちらも同じことです。・・・スピードを落として、考えるべきときに来ています。私たちが壊しているものは、あまりにも重要で貴重です。その多くは置き換えできないものです。」

「労働者のために立ち上がる唯一の人は他の労働者です。・・・正しいことに取り組もうとしているデザイナーが可能性を失わないために、これからの若い世代のデザイナーには職能だけでなく組合が必要です。」

「なぜデザイン教育を美術教育の一環としているのか?・・・既存のデザイン教育プログラムがとても重要なことに変わりはありませんが、現代のデザインはあまりにも重要で、あまりに広範囲になっています。」

「(デザインに公的なライセンスがあるとしたら) 規制当局が、デザイナーは無謀で自分自身を規制することができないと判断したときに設定されるでしょう。これはデザイナーのためではありません。ユーザーのためです。私たちはあまりに速く動いて、あまりにも多くのことを壊しました。アマチュアの時間は終わります。」

プロフェッショナルというのはどういうことかを考えさせられる記事でした。

元記事はこちら
Design’s Lost Generation >>

Mike Monteiro さんのほかの記事もおもしろそうです。

2018年9月2日 デザイン