2024年のUXデザイン トレンド

AIの登場によって業界が崩壊に向かっているかのようなレポートです。
それでも人間中心であろうとするのは大切なことに思えます。

下記の5つのテーマについて「デザイナーにとっての意味」「チャンスはどこにあるか」「心構え」が書かれています。
01.自動化:AIはあなたを引き上げ、あなたを押し出す
02.飽和:縮小するチーム、縮小する力
03.コモディティ化:ベルトコンベアのデザイン
04.金融化:ユーザーフローからキャッシュフローへ
05.崩壊:ユーザーの信頼は有限な資源

どんな分野でもデザインが重要であることは変わることがないと思いますが、デザイナーの重要性は低くなっていると感じます。デザイナーは供給過多で成果物としてのデザインに新規性が感じられず飽きられているのではないでしょうか?
また、今後AIによって大量生産されるデザインやコンテンツは、価値あるものとしてユーザーに受け入れられるでしょうか?
他人の存在はこれからも私たちの意思決定に重要な役割を果たすことになるでしょう。
使いやすさを提供するだけのUXデザインから、人としての関係や責任を果たせるUXデザインになるのかもしれません。

以下は、いくつか気になった箇所の抜粋です。

「誰でもそこそこ良いデザインを作ることができる。すべてのインターフェイスが同じように見え始めたとしたら、それはデザインツールが設計通りに機能しているからだ。」

「企業は常に、根本的にコモディティ化されたデザインから生まれる予測可能性と安全性を好み、そのためにデザイン・システムに多額の投資をするのです。同時に、デザインプラクティスの自動化は一部のデザイナーを不快にさせることもある。」

「基本的なUIパラダイムが「解決された問題」になりつつあるのなら、私たちは解決すべきもっと深い問題に目を向けるべきだ。」

「私たちは本当に「顧客満足度の向上」を目指しているのか、それとも単に顧客サービスのコストを抑えようとしているだけなのか。ユーザーの利益を最優先に考えているのか、それとも単にビジネスの推進力として共感を利用しているだけなのか。」

「会社の数字を理解し、それをストーリーに活用する。ビジネス用語を学び、プレゼンするデザインと、それがどのようにビジネスを促進するのかを結びつける。しかし、組織における自分の価値を証明するために、決してガス抜きをしてはいけない。勇気を持って、人間として、人間のためにデザインすることを忘れないでください。」

「デザインを決定する際に主にA/Bテストに頼っている企業は、そうした欺瞞的なパターンを最も成功したものとして選ぶことが多いのだ。強制的なペイウォールは、あらゆるコンテンツプラットフォームにとって当たり前であり、一方でサブスクリプションサービスは解約が不必要に困難である。かつては無害と考えられていたソーシャルネットワークは、ヘイトスピーチから陰謀論に至るまで、結果に対する説明責任なしに有害な声を助長する。」

「VRやARのような新しい情報エコシステムや、AIがもたらす製品の津波は、デザイナーに再教育を要求し、他人を傷つけることのない製品決定を下せるよう、常に一歩先を行くことを求めている。準備をする最善の方法は、私たちの周りで起こっている技術的、法律的、社会的な発展について、積極的に情報を得、教育を受ける努力をすることです。」

The State of UX in 2024 >>

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UXデザインの不都合な真実

UXデザインの先駆者が語る「UXデザインはどこで間違ったのか?」

2023年12月2日 UX / UI

Google検索のデザイナーだったElizabeth Larakiさんのツイート。
Googleが作ったテキストボックスのUIが、この20年間の「検索」の決定的なUIデザインだったけど、ChatGPTの画像や動画によるUIで変革の時を迎えているそうです。

いくつか抜粋です。

「私がグーグル検索のデザイナーだった頃、主要な検索エンジンはすべて同じように見えました。
グーグルは、何十億ドルもの広告収入を支える、最適化されたUIを備えたマーケットリーダーだった。
当然のことながら、それが検索結果を表示する方法となった。
その成功により、グーグルが大きなUIの変更を検討することは非論理的となった。
そして、グーグルが行った変更は、他のすべての人々に反映された。
だから20年後、私たちは検索エンジンのUIに漸進的な変化しか見ていない。」

「LLM(大規模言語モデル)の機能を理解し、人々がLLMとどのようにインタラクションするかを定義するのは、まだ早い。
これらは未知の領域です。」

「入力ボックスはシンプルで汎用性があり、親しみやすい。
- わかりやすい → ボックスに質問を入力する。
- 汎用性がある→ボックスはあらゆる種類の質問/クエリーを扱うことができる。
- このパラダイムは非常に馴染みやすい。
このため、LLMは本質的に ”より良いグーグル ”になっている。」

「しかし、先週のChatGPTの発表は、新たな可能性への扉を開くものでした。
ChatGPTは今やマルチモーダルです。」

「私たちは会話ボックスが最良のインターフェイスだと思い込むことで、その可能性を制限している。
今、デザイナーには、真に斬新なインタラクションを生み出し、20年以上前の検索UIのパラダイムを打ち破るチャンスがある。」

検索エンジンはユーザーが感じているほど効率が良いわけでも正しいわけでもないのかも。
ChatGPTがデザインにもたらす変化が、便利なインターフェイスだけのことなのか、私たちの認知経路を根底から変えるようなUXの変化になるのか、興味深いところです。
何年後か経ったら検索エンジンのことを「なぜあんなものを使っていたのか」ということになるかも。

Google検索のUIは、広告と検索結果を混同させる問題を抱えているとも思っています。
それまでのユーザーと広告の文脈を壊して、アドフラウドの温床にもなったと思います。
ChatGPTに広告が導入されるなら、適切なUI/UXであって欲しいと思います。

Elizabeth Laraki >>

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2023年10月7日 UX / UI

ジョニー・アイヴ サム・アルトマン 孫正義

OpenAIの技術を中心とした新しい消費者向け製品がどのようなものになるか、サンフランシスコのスタジオでブレーンストーミングを行ったそうです。
孫正義が10億ドルの資金提供して、ジョニー・アイヴ のデザインスタジオ LoveFrom で開発しようとしているそうですが、OpenAI、ソフトバンク、LoveFrom はコメントを拒否してるそうです。

スクリーンに依存しないインタラクティブなコンピューティングデバイスで、人工知能と対話するためのより自然で直感的なUXを提供することを目指してるらしいです。
ジョニー・アイヴ はiPhoneが強迫的な習慣や中毒性に懸念を示していたこともありました。

「AIのiPhone」ということで、スマートスピーカーとどう異なるのか興味あるところです。
ジョニー・アイヴ と サム・アルトマン は似ているところがありそうな気がしてます。
うまくいけば、コンピューティングやデザインにおける新しいチャレンジになるかもしれません。
孫正義が欲張って台無しにしないことを祈ります。

Details emerge on Jony Ive and OpenAI’s plan to build the ‘iPhone of artificial intelligence’ >>

OpenAI and Jony Ive in talks to raise $1bn from SoftBank for AI device venture >>

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ジョニー・アイヴが「アイデア」について語る、2021年カリフォルニア芸術大学の卒業式のスピーチ。

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ケンブリッジ大学のスティーブン・ホーキング フェローシップ賞の受賞式でのジョニー・アイヴの『アイデア』についてのスピーチ

2023年9月30日 UX / UI

frog Design のUIキット「メタクロシス」_01

frog Design のUIキット「メタクロシス」_02

frog design を創設したエスリンガーは反骨精神の人です。
「『機能に従う』はダメなデザインの言い訳になり下がってる。・・・人は自身の感情で納得したいんだ。合理性に納得したいのではない。」
とも言っています。

UIキットは便利で、疑うことなくコスト削減になりますが、UIキットの利用と運用をルール化することは、社内の物の見方を平準化してしまうような気もしています。型破りな物の見方を抱えているデザイン組織の方が魅力的な気もします。

やや関係ない話ですが・・・
多様な製品やサービスを網羅するサイトを構築するときに、それらの多様さを包括できるデザインを考えることに夢中になったことがありました。多様さを包括して一貫性があり、さらに魅力的なブランドイメージを備えたデザインは難しいです。
クライアントからはデザインの完成度や統一感よりも、
・それぞれの製品やサービスに関する情報がサイトから頻繁に発信されるようになること
・その情報発信に各部門の関係者が主体的に関与できるようにすること
が重要であると伝えられました。これは発想の転換になりました。
素晴らしいデザインがサイトに掲げられていることよりも、多くの人の関与を受けながら動き続けていることの方が大切で、デザインはその役に立つことができると思えました。

創設者の思想をベースにしている「メタクロシス」のデザインは素晴らしいと思います。
以下は引用です。

工業デザイナーのハルトムート・エスリンガーは、デザイン会社の公式両生類マスコットにブラジル産のアマガエル、フリードリンを選びました。

メタクロシスとは、一部の動物が持っている、周囲の状況に応じて色や外見を変える能力のことです。カエルのデザイン理念の中核をなすのは、柔軟性、適応性、そして生存のための変化へのコミットメントです。

デザイン・システムは、製品組織ではしばしば不評を買うが、創造性の高い組織ではなおさらです。日々の仕事の目的や性質が革新的であり、既成の秩序に逆らうことでさえあるクリエイティブな人々が、デザイン・システムに従うことを提案されたとき、抵抗にあうことがあるます。

システムに従うことは健全な懐疑心を持って扱われることがあります。

「デザイナー、エンジニア、QAスペシャリストを組み合わせてボタンをデザイン、製造、テストするとしよう。これらのスタッフの人件費が1時間100ドルで、このレベルの品質でボタンをデザイン、製造、テストするのに、この3人のチームを合わせて200時間かかるとすると、ボタンのコストは20,000ドルになる。もし、あなたの企業が50のチームでそれぞれボタンを作っているとすれば、良いボタンを作るために100万ドルのコストがかかることになる。」

最新かつ最高の機能(自動レイアウト、バリアント・プロパティ、内蔵のインタラクティブ・アニメーション)をすべて備えた、ホワイトラベルのFigmaコンポーネント・ライブラリの作成を考えていました。

Project Metachrosis: How We Turned a UI Kit into a Global Movement >>

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ハルトムット・エスリンガーによる「俺がスティーブ・ジョブスにデザイン第一主義をどうやって教えたか」

2023年8月6日 UX / UI

『UNLEARNING THE VISUALS』展

『UNLEARNING THE VISUALS』展

『UNLEARNING THE VISUALS』展

『UNLEARNING THE VISUALS』展

『UNLEARNING THE VISUALS』展

ビジュアルデザインスタジオWOWの25周年の展示。
見応えある映像のインスタレーションでした。
プロ集団の仕事という感じ。
インタラクション、没入型、空間演出・・・など、これから「映像」がどう使われていくことになるのかを考えさせる展示でした。

「回す」という作品は設置されたダイヤルと映像がインタラクティブに連動していて、映像からのフィードバックとしてダイヤルに抵抗感などが発生するようになっていました。
映像のうえで回せない方向に強い抵抗感が発生するように設定されていましたが、日常的にダイヤルに触れていた世代としては、回せない方向は抵抗ゼロでスカスカで、回せる方向には小さな抵抗が発生する・・・という方が物理的なダイヤルのインタラクションのような気もしました。
説明が下手なうえに間違ってるかもしれません。

WOW 25th Anniversary Exhibition “Unlearning the Visuals“ >>

2022年10月29日 UX / UI

WHO ARE WE 「観察と発見の生物学」展 

WHO ARE WE 「観察と発見の生物学」展 

WHO ARE WE 「観察と発見の生物学」展 

WHO ARE WE 「観察と発見の生物学」展 

凝った展示でした。会場は小学生くらいの子供がいっぱいでした。
「引き出し」のモチーフをUIにして「発見」というUXを演出するような展示でした。
照明もドラマチックに演出されていて、剥製がカッコよく見えました。

野生生物や自然のダイナミックさはない展示でしたが、学術的なインフォグラフィックもよくできていて、おもしろかったです。
それほど広くない会場にちょっと詰め込み過ぎな感じもしました。

「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」 国立科学博物館収蔵庫コレクション | Vol.01 哺乳類 >>

2022年9月11日 UX / UI

the elements of user experience

ジェシー・ジェームス・ギャレットの著作の『The Elements of User Experience – 5段階モデルで考えるUXデザイン』の邦訳版が5月に出版されたそうです。
その前書きが紹介されています。おもしろいです。

この前書きにある「古き良き時代」「経験は要素に還元されない」「ユーザーの経験についてではなく、あくまでデザインする者がデザインする際に考慮すべき事項にすぎない」などの言葉にある矛盾や誤解についての率直さを受け止めた上で、勉強しなおしてみたいです。

「5段階モデル」の再解釈を通し、UXの本質を見つめ直す:まえがき『The Elements of User Experience – 5段階モデルで考えるUXデザイン』 >>

どうやら、ジェシー・ジェームス・ギャレットさんは話がおもしろい人のようです。

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2022年6月25日 UX / UI

「UXデザイン」「ヒューマン-センタード デザイン」などの言葉を生み出して、数々の有名企業で活躍し、デザイン教育にも大きく貢献したドン・ノーマンですが、通常のデザイン教育を受けているわけでなく元はエンジニアだったそうです。

これは2020年のインタビューですが、「美しさ」のためのスキルに偏重したデザイン教育を変えてゆく必要があると語っています。デザインがサービスや体験のために使われるようになるためには、社会、経済、政治、工学、医療などの他分野と一緒にデザインに取り組む必要があるそうです。
ここでは「サービス・デザイン」という言葉を使って、ジャーニーマップの手法も紹介しています。

いくつか抜粋です。

「気候変動は、デザイナーが生み出した問題です・・・しかし、デザインが解決策を提供しようとするならば、学生がこれらの問題に取り組めるようにデザイン教育を変える必要があります。」

「デザイン教育は「学問的な深さ」よりも「美学」や「クラフト」が重視されていることに問題があります。私たちが知っているようなデザインを生み出すためには重要なことですが、それだけを学ぶべきではありません。」

「デザインが最も重要なのは、それがサービスや体験のために使われるときです。・・・もし私が病院を設計しているとしたら、その建物が患者や医療従事者にどのようなサービスを提供できるかを考えることは、美観を考えることよりもずっと重要です。」

「未来に向かって楽観的に考えています。問題は、今日のデザインにあるのではなく、そのデザインが置かれている世界にあるのです。世界は変化しており、私たちはその世界に合わせてデザインの仕事を拡大する必要があります。」

デザインにはまだカバーできていない分野がたくさんあって、考慮しなくてはいけないことがたくさんあるようです。

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2021年11月23日 UX / UI

Windows11のデザインディレクターChristina Koehnのインタビューです。
プロダクト全体のコンセプトを策定して、具体的には壁紙、テーマ、サウンド、アイコンなどの見た目を左右する要素を担当しているそうです。UXデザイナーやインダストリアルデザイナーとソフトウェアとハードウェアの垣根を越えて取り組む仕事です。

10億人が使うプロダクトをデザインするために、多くのデザイン分野を横断しながら進めるダイナミックなデザインプロセス。
しかも、そのプロセスをコロナ禍のなかで進めたのは素晴らしいです。

以下は抜粋です。

最初のステップとして、チームは一連のデザイン原則を特定して設定しました。これが作業の指針となります。
原則には、「楽」「落ち着き」「パーソナル」「一貫性」などがあり、これらはユーザーエクスペリエンスだけでなく、製品の外観にも影響を与えます。

例えば、「落ち着き」を原則としたのは、新しいOSを使うユーザーの不安を軽減するための試みでした。そのために、チームはWindowsのグラフィック要素の角を丸くし、色を和らげました。

もう一つの原則である「パーソナル」とは、ユーザーが自分のデバイスでどのように作業するかにシステムを適応させる必要があることを意味します。これは特にアクセシビリティに影響します。多くの人々のためにデザインすることの難しさの一つは、”デフォルト ”にこだわらないことです。

それでもチームは、必要に応じて原則にとらわれず、リスクをとって活動しています。

10億人が見ることになるプロジェクトに取り組んでいる以上、自分が出したものを評価してくれない人がいることを理解しなければならない。

「私の73歳の母をはじめ、多くの人がWindowsの使い方を熟知しているので、いたずらに要素を変えるわけにはいきません」
Koehn氏によると、チームではこれを「チーズを動かさない」と表現しています。

「デザインに終わりはありません。それは旅のようなもので、私たちはこの時間を利用してお客様の声に耳を傾け、設計プロセスを継続しています」

元記事はこちら
httpsIn-house teams: a Microsoft design director on bridging industrial design and UX >>

2021年11月3日 UX / UI

UXをデザインするときに起こりがちな「もどかしい現実」についての記事です。
UXデザインの真正性や信憑性に影響する事柄ですが、長い間受け入れられてきたそうです。

具体的には・・・
使われることのないリサーチ。
期待に沿わないという理由で棚上げされた調査結果。
安くて早いという理由でスタッフがユーザーのふりをして行うワークショップ。
デザインを改善するには遅すぎるタイミングでの検証。
・・・などのこと。

こういうことを「UX劇場(UXシアター)」と呼ぶそうです。
ユーザーをプロセスに参加させずに、あるいは単にショーのためだけにユーザーを参加させて、何らかのデザイン方法論を決めていくこと。
日本だと「茶番劇UX」「御手盛UX」「忖度UX」といったところでしょうか。
ユーザーもデザイナーもいないUXデザインのことのようです。

どうしてそういうことになるのか。
以下はいくつか抜粋です。厳しい指摘です。

「ユーザー中心設計を謳う多くのプロジェクトの表面を見てみると、実際にユーザー中心設計を行っているプロジェクトよりも、ユーザー中心設計のブランディングを行っているプロジェクトの方が多いように思えます。」

「誰もがユーザーの役割を演じているだけで、要件は架空のものなのです。その結果、ユーザーは使いにくくなり、時間やお金、プライバシーや安全性を犠牲にすることになるのです。」

「「UXデザインとは何か?」一般的には、ユーザーエクスペリエンスデザインとは、対象となるユーザーが製品やサービスを利用する際のインタラクションを定義するプロセスであるという点で一致しています。しかし、UXデザインの範囲をさらに定義しようとすると、プロダクトデザイン、デジタルデザイン、インタラクションデザイン、サービスデザインなど、さまざまな議論に発展します。」

「デザイン思考は、経営者が新しいサービスや製品の革新に向けて、より慎重なアプローチをとるためのコンサルティングツールとして開発されました。このモデルには5つのステップがあります。「共感する」「定義する」「アイデアを出す」「プロトタイプを作る」「テストする」。一見、堅実なアプローチのように見えますが、デザイン思考はユーザー中心設計の代用として採用されることが多く、ユーザー不在のまま社内で活動が進められ、結果的にUX劇場になってしまうのです。」

「UX劇場につながる2つ目の問題は、デザインが誰にでもできるものとして喧伝されていることです。・・・組織が「誰もがデザイナーである」という認識を持つと、ユーザーエクスペリエンスデザインは、熟練した実務家が主導するプラクティスとしては認識されず、誰もが実行できる思考プロセスとして認識されるようになります。」

「デザインを理解しないまま、デザインへの投資を最小限に抑えている組織では、デザインの成果や結果が乏しくなりがちです。最終的なデザインがユーザーのニーズを満たさず、クレーム、返品、悪い評価、さらには利益の低下を生み出します。その結果で、ユーザーエクスペリエンスデザインをさらに低く評価することになるかもしれません。」

「批判ではなく批評の視点からUX劇場にアプローチすれば組織の改善につながります。・・・テストやリサーチがどのように役立っているかを示すことができます。結果を広く共有し、デザインに関わる意思決定に意見ではなくデータを用いることを強化することができます。」

元記事はカナダ政府のユーザーエクスペリエンスデザイナーTanya Snookさんによるものです。
正直で力強い記事だと思います。ただし、UXデザインの信憑性や真正性を担保するためにすべきことが「ユーザーの参加」と「組織のリーダーの協力」だとしたら、UX劇場を終わらせるのは難しいような気もしました。
記事にあるように、会計や法律やまたは建築のように検証可能な明確なプロセスが必要な気がしました。
ユーザー調査のデータではなく、UXデザインのプロセス自体が信憑性や真正性を担保するようになるといいのかも。

元記事はこちら
UX design has a dirty secret >>

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2021年10月25日 UX / UI