ジェシー・ジェームス・ギャレットは、2001年にUXコンサルタント会社Adaptive Pathnoを共同設立し、『The Elements of User Experience』の著者でもあります。
彼が現在のUXデザインを取り巻く問題について語ってます。
UXデザインの決定プロセスや、UXデザインの役割が、UXデザインの本質から離れてしまっていることを嘆いています。
以下は部分的な抜粋です。
「20年前、ユーザーエクスペリエンスデザインが研究室から本格的な産業へと発展したとき、その未来はとても明るいものでした。UXは、一夜にして急成長産業になりました。・・・奇妙に聞こえるかもしれませんが、UXにとって、ある意味では決して良い状況ではありません。実際のデザイン作業の多くは、かつてないほど質の高いものになっています。しかし、これらの明るい兆しの裏には雲があります。」
「私たちの多くにとってUXの暗黙の約束とは、探究心と洞察力による経営という哲学でした。新たな創造的探求が人間の行動ついての新たな疑問につながり、それが新たな製品や価値の機会を定義する原動力となりました。また、UXの文化は、私たちが作ったものを使う人々や、彼らの人生や経験によって私たちとはまったく異なる行動をとる可能性のある人々に対して、ある程度の敬意や思いやり、そしてシンプルな謙虚さを必要としているように思えました。・・・人間中心のデザインの高まりが、人間中心の企業への道を切り開くことになるだろうという理論です。」
「最近の多くの組織におけるUXプロセスは、「UX劇場」(2018年にTanya Snookが考案したアイデア)に過ぎません。無知なビジネスリーダーや希望に満ちたUXの新入社員に対して、しっかりとしたデザインプロセスであるかのように見せかけるために、費用対効果の外観を正当性で磨き上げているのです。この分野の言語やアイデアが、実践の根底にある原則を知らず、気にも留めなかった外部の人間によって共謀され、堕落していくのを目の当たりにしてきました。」
「企業はスケーリングを求めますが、基礎的なUXの仕事はスケールしません。予測可能で反復可能なプロセスや一般的なクッキーカッターのような役割には適していません。なぜなら、UXの仕事は、有機的に進化するビジネスの最先端を特徴づける、未知で、滑りやすく、定義しにくい問題を扱うものだからです。」
「学校ではUXは高貴で創造的であると説明されていたのに、就職してみると、製品をリリースするという名目で高貴さや創造性を発揮する機会がすべて切り取られてしまっているのです。・・・このような状況を招いた責任は、UXデザイナー自身にあると言ってもいいでしょう。彼らは、その仕事の価値について説得力のある話をすることができず、資金を得るために必要な信頼を築くことができませんでした。UXがプロダクションレベル以上の価値を提供するという約束を果たせなかったとしたら、それはそもそも間違った約束だったのかもしれません。言い換えれば、もし私たちがすべて間違っていたとしたら、ということです。」
読んでいるうちに、なんとなく昔のことを思い出してきました。
個人的な印象ですが、UXの少し前に「ユーザーセンタードデザイン」が流行ってたと思います。
もともとは善意と配慮に基づいたデザイン理論だったと思いますが、ビジネス側の人たちには「ユーザーの行動をコントロールして活性化できるかも」という曲解と期待を与えた気がします。
UXはこの流れを汲んでビジネスの現場に受け入れられた気がします。
それまでのユーザーセンタードデザインより実践的で、ビジネス要件のKPIを設定できそうなUXデザインのコンセプトは、スムーズに受け入れられて急成長した気がします。
UXデザインは、最初に期待されたことがUXデザインの本質ではなく、急成長した理由もUXデザインの本質ではなかったかもしれません。それでもUXデザインは人の認知に重要な役割を担うデザイン分野だと思うので、ただのバズワードにならないでほしいです。
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