Filefoxで有名なMozillaファウンデーションは、従来からの「草の根から政府へ」のマニフェストのもとに、公平で開かれたインターネットを世界的な公共資源として取り戻すための、新しいブンランドシンボルを打ち出しました。
手掛けたのは、バーガーキングのリブランディングも手掛けたJKR。
Mozillaのグローバル・ブランド責任者のエイミー・ベビントンによれば、ビッグ・テックによる支配と倫理的課題の拡大からインターネットを取り戻すために、人々に力を与えたいそうです。
「人々は、インターネットが自分たちの生活にどのような影響を与えるかをコントロールできなくなり、データプライバシー、技術の独占、AIの急速な進歩、倫理的懸念の増大、誤った情報、商業化といった問題に直面している。」
JKRは、ブランドがすでに人々の心の中にどのように存在しているかを理解して、記憶に残っている要素を掘り起こすことから始めたそうです。
いいアプローチだと思います。
「Mozillaのロゴを描いてほしいと頼んだところ、ほとんどの人がFirefoxのロゴを描きました。」
そして、JKRはワードマークとカスタム書体で新しいアイデンティティを打ち出したそうです。
個人的には「://」をモチーフにした以前のワードマークが好きでしたが、これからのインターネットと人々の関係にとって大切なことはプロトコルではないということのようです。
Mozilla pledges to ’Reclaim the Internet’ with new identity by JKR >>
手掛けたのはPentagramのアンドレア・トラブッコ=カンポスとそのチーム。
ほんの少し手を入れることで、今っぽくアップデートしていて上手いです。
カラーリングの変更は適切だと思います。
以下はPentagramのサイトから引用です。
説明も上手いです。
PayPalのアイコンであるモノグラムは、よりシャープでモダンに描き直されました。更新されたマークでは、重なり合う文字の角度は変わりませんが、字形の角のカーブが取り除かれ、よりシャープな外観になっています。色彩は連続的なコントラストに調整され、ロゴのレイヤーに以前にはなかった奥行きと立体感を生み出している。ブライトブルーとディープブルーが重なり、PayPalが所有する成長中のモバイルアプリにちなんだVenmoブルーが浮かび上がる。
モノグラムの構造は劇的に変化していないが、付随するロゴタイプとの関係は変化している。アイデンティティの外観を高め、より柔軟にするために、シンボルはもはやワードマークと固定されていない。この2つの要素は互いに独立して機能するようになり、要素をシンプルにすることでより多くの可能性をもたらしている。
新しいPayPalのワードマークは、アイデンティティの基礎となる要素であり、大胆さ、自信、明快さというブランド特性を体現する新しいカスタム書体、PayPal Proに設定されている。PayPal Proは、Lineto Type FoundryがFuturaを現代的に描き直したLL Supremeをカスタマイズしたものである。1927年にポール・レナーによってデザインされたFuturaは、2,000年以上前の文字のプロポーションにインスパイアされた幾何学的なサンセリフである。時代を超越した普遍的なフォルムを持つこの書体は、メッセージに焦点を当てることを可能にしている。PayPal Proも同様に、純粋に直線と円曲線だけで構成されることを目指している。PentagramはLinetoとPayPalと密接に協力し、読みやすさと実用性のために小さなサイズで最適化された第二の書体、PayPal Pro Textを開発している。
時代を超越した活字は、ニュートラルな黒と白のパレットによって新しいロゴにマッチし、フィンテックの代名詞となっている青とは一線を画している。代わりに、ブルーはブランドのアクセントとエネルギーとして使われている。また、他の小売ブランドと重複していた以前のパレットから黄色を排除している。この変更はUIにも及び、時代遅れの黄色い支払いボタンは黒になった。
PayPalの使いやすさを強調するアイデンティティのモーション・ランゲージは、デジタルでも物理的でも、決済を行う際の日常的なジェスチャーや行動を利用している。ブランド・アニメーションは、タップ、クリック、フリップ、スワイプでワードマークとタイポグラフィを活性化し、製品体験の動きをアイデンティティそのものに取り込んでいる。
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さらにシンプルになったPayPalの新しいロゴ
Crucible(クルーシブル)は、バーやレストランのコンサルティングや、ドリンクやフレーバーの開発を手掛けるユニークな会社です。
Madalena Studio はクルーシブルのブランドアイデンティティとして、シャーレの上で培養されるバクテリアを利用しました。
その手法はCrucibleを的確に表現していて、ユニークで美しいです。
とても相応しいアイデンティティ。
Cohere は企業向けに言語AI開発支援をする会社。
「言語AI(自然言語処理、NLPとして知られる)を最先端の実験技術の領域から、今日のビジネスニーズにもたらすことができるビジュアル・アイデンティティ。」という課題に、「新しい自然」というコンセプトで、ボロノイ図を利用してアイデンティティを確立しています。
使いやすそうなCohereの書体はヘッドライン版、アウトライン版、テキスト版、モノラル版があって、ヘッドライン版は、ボロノイ図の分裂線が入ったフォルムになってます。
ワードマークもCohereの書体を使って作られて、細胞分裂のようイメージになってます。
カラーパレットは、自然を感じさせるナチュラルな色調と、コンピューティングにつながる合成色調。
コンセプトが明確でありながら柔軟なアイデンティティ。こういうことができるのがいい。
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議員の活動で動きつづけるドイツの自由民主党議員の新しいアイデンティティ『The Moving Parliament』>>
ピーター・サヴィルのミニマルなアイデンティティも良かったのですが、この5年から10年のファッション業界のブランディングはミニマル志向になりすぎていたかもしれません。
いいタイミングでのリブランディングで、装飾的な騎士のシンボルとセリフのロゴは、安心感と親しみを持って受け入れられたようです。
ブランド・キャンペーンの写真には、英国らしいロケーションとモチーフが登場しますが、ユニオンジャックのような政治的なイメージは避けているそうです。
一人の人物をスナップショット風に写した写真は、SNSで映えるし、ブランドが個人の価値観に根ざしていることをうまく表現してるような気がします。
Does Burberry’s redesign signal a new chapter for ‘British’ symbolism? >>
まず価格が高すぎて批判されていますが、ラグジュアリーなイメージにしているのも失敗かもしれません。
ブランドがWeb2からweb3への転換してコミュニティを構築することの難しさ・・・
なにか少しだけわかったような気がします。
よくわからないので、詳しくは記事の末尾のリンクでどうぞ。
ブランドとしては酷い結果になった印象ですが、糧になる失敗であり、学ぶことが多いケースな気がします。いまはまだ、誰もこういうことのコンサルティングはできないかも。
批判だけでなく好評もあるようです。
NFTを購入した911(実車)オーナーのブログ記事からはポルシェ愛が感じられます。
ポルシェNFT、フロア価格が上昇──発行停止による供給減が後押し >>
frog designのスペンサー・スコットさんによる記事です。
Web3は企業やブランドが率先して取り組むべきことなのか?・・・という気もしますが、こういう記事が少しリアルに感じられるようになりました。
スペンサー・スコットさんは、Web3、NFT、およびメタバース領域における、frog designの視点、能力、および提供メニューの構築に取り組んでるそうです。
以下は抜粋です。
「Web3 とメタバースの出現は、すでにあらゆる分野の企業に対して、オムニチャネルからメタチャネルへの進化を求めるプレッシャーを与えています。この急成長する領域で最高のエンゲージメントと価値を創造するためには、ビジネスとブランドの正しいメタ戦略の必要性が今、必須となっているのです。」
「オムニチャネルとは、一般的に、デスクトップ・ブラウザー、モバイル・デバイス、実店舗の間でシームレスな顧客体験を提供することに焦点を当てた、エンゲージメントとセールスに対するマルチチャネル・アプローチです。」
「世界は今、私たちが「バーチャルライフ」と呼ぶものの出現により、新たな破壊的変化を体験しています。私たちは、没入感のあるオンラインの世界は、物理的な世界と同等かそれ以上の価値を提供する態勢にあると信じています。このトレンドは、最近の多くの技術革新によって可能になり、推進されています。」
「それは、新しい消費者のニーズ、行動、資産、コミュニティ、製品、チャネルを生み出すでしょう。このような環境の中で、いかにして顧客とつながり、関わり、販売する新しい方法を生み出すかが、未来に向けて競争しようとする企業に今求められているのです。」
小売としてのNIKE、ソーシャルとしてのMeta、テクノロジーとしてマイクロソフト の事例をあげています。
そのうえで、ブランドがWeb3 やメタバースに取り組むには、以下の原則を考慮する必要があるとしています。
■人間との関連性を高める
顧客のニーズやライフスタイルを核として、人間中心のレンズで戦略的に実験するのが大切だそうです。
■ デザインで普及を促進する
メタバース固有のビジュアル言語、インタラクション、カルチャーを取り入れることが大切だそうです。
■コミュニティを形成するエンジニアリング
Web3関連のテクノロジーとそれを取り巻くカルチャーは、コミュニティ指向です。
この分野で新製品やサービスを展開するには、コミュニティ創出のためのプランが必要になるそうです。
■柔軟に学習する
継続的な意思決定のためのデータ収集が必要です。
現状は硬直した永久的なものではなく、実験場として扱われるべきです。
よりよい明日を築くために今日学ぶことが重要だそうです。
手探りで混沌とした感じですが、未来に少しだけ希望が見えるような記事だと思います。
20世紀カウンターカルチャーのアイコンだった「ワーゲン・バス」がカーボンニュートラルになって登場。2022年5月にヨーロッパから発売開始だそうです。販売面では商用の『ID.BUZZ Cargo』が主力になりそう。
サイズはかなり大きそうですが安全装備満載で、シルエットや着座位置はワーゲン・バスのイメージを色濃く残してます。
電気自動車としてのプラットフォームは他車種と共用。
ワーゲンバスもビートルと共有されていたので、そこは変わってないようです。
ワーゲンバスは1950年から2013年まで生産され、生産終了時にはトリビュート・ショートフィルムも制作されました。
おばあちゃんの声で思い出を語るのは、世界中で愛されたこのクルマのキャラクターに相応しくていいです。
【関連記事】
フォルクスワーゲンによる『Kombi』のためのトリビュート・ショートフィルム >>6
伝説的なフォルクス ワーゲンビートルの広告のドキュメンタリー『Remember Those Great Volkswagen Ads?』
元記事はこちら
nostalgia meets the electric era — volkswagen debuts the ID. BUZZ microbus >>
OpenWebはパブリッシャー(出版社)向けのプラットフォームだそうです。
出版社のサイトのコメント欄は、かつては共通の興味や関心に基づいた議論がされてコミュニティが形成されていましたが、その舞台はソーシャルメディアに移り、横行する「荒らし」によって機能しなくなりました。
これは出版社のビジネスだけの問題ではなく、教育や認識を歪める有害なコミュニケーションとして社会的/文化的な問題となっています。
そこでOpenWebは、オンライン上での「会話」を健全なものにするためのプラットフォームを提供するそうです。
出版社のウェブサイトの「コメント」セクションを再構築することで、ユーザーをソーシャルメディアプラットフォームに奪われることなく、出版社が会話をホストすることを可能にする。
ユーザーを登録ユーザーに変え、出版社に持続的な収益をもたらし、重要な広告収入がソーシャルメディアの独占企業に流れるのを防ぐ。
という狙いのプラットフォームになってるそうです。
ネット上のポジティブな会話がもたらす波及効果によって、社会全体に利益をもたらすかもしれません。
すばらしいチャレンジだと思います。
このOpenWebのアイデンティティを、ブランディング会社のCOLLINSが手掛けているそうです。
このブランディングに必要なことは・・・
「OpenWebは信頼できる価値あるパートナーとして理解される必要がある」
「OpenWebは出版社の成功に深く関わる企業として認識される必要がある」
と定義して、そのアイデンティティは「重厚さ」「緊急性」「理想主義」を込めてデザインされているそうです。(なるほど、上手いです。)
シンボルはOpenWebの象徴であり、オンラインでの会話の質を向上させるという使命を表しています。
異なる見解の中に存在しうる交流、啓発、調和をイメージさせるデザインになっています。
文字によるコミュニケーションを中核とする企業であり出版社のパートナーとしてのイメージを持たせるために、20世紀初頭の新聞見出しのタイポグラフィのスタイルを借用しているそうです。
そのタイポグラフィで届けられるメッセージも、信頼感を持ちながらも挑発的な、20世紀の新聞記事のイメージになってるようです。
COLINSはOpenWebのUIやダッシュボードのデザインも手掛けているようです。
(ブランディング会社って、そういうデザインも手掛けるようになったんですね。)
OpenWebのブランディングについてくわしくはこちら >>
Collins looks to eliminate online trolls with a new identity for OpenWeb >>
懐かしいロゴが新しくなるそうです。なんかちょっと残念な気もします。
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