1979年のスリーマイル島の事故があった2号炉の制御室と、その事故を教訓に改善された1号炉の制御室を比較検証しています。著書では他の事例も紹介しながら、ガジェットとUXとメンタルモデルのありかたを紹介してるようです。
以下はリンク先の記事のさらに抜粋・翻訳・追補ですが、日本語版を出版してほしいです。
「1979年の事故を受けて、スリーマイル島の2号炉は封鎖されました。しかし、1号炉は2019年までひっそりと稼働し続けました。『誰のためのデザイン?』で有名な認知科学者のドン・ノーマンの意見を取り入れて改装されました。」
「私が行ったときには、1号機から蒸気が綿のように立ち上っていてた。その隣には、30年間封鎖されてきた2号炉の塔が錆びついて静かに立っていた。この光景は、不気味で奇妙な美しさを醸し出していた。壊すのに莫大な費用がかかる2号炉は、ポストモダンの記念碑的な彫刻のようにそびえ立っていた。それは、文字通りの「警告」としてそこにあった。」
「1979年、スリーマイル島の制御室に集まった人々にとって、フィードバックの異常、制御の一貫性のなさ、操作の難しさなど、これらの問題はさらに大きな問題となった。・・・彼らには、異質で奇妙な出来事がどのように結びついているのかを示すメンタルモデルがなく、何が起こっているのかを推測することができませんでした。」
「ユーザーエクスペリエンスとは、新しい製品を私たちのメンタルモデルに当てはめることだと言えるでしょう。簡単な例を挙げれば、私たちは本がどのように機能するかを想定しています。例えば、本にはページがあり、情報が順番に並んでいて、情報を得るためにはページをめくる必要があります。タッチスクリーンのAmazon Kindleが成功し続けている理由のひとつは、このメンタルモデルをいかにして再構築したかにあります。本のページをめくるように、電子書籍ではスワイプしてページをめくります。」
「ガジェットがどのように動作するか想定できないとき、私たちはフィードバックを利用して、そのロジックについての漠然としたメンタルモデルを形成します。しかし、メンタルモデルを構築する最も直接的な方法は、絵を描くことです。今、1号機の制御室を見渡してみると、原子炉全体のメンタルモデルを作るために作り変えられているのが分かります。私のような素人が見ても、システムの主要部分は容易に想像できます。」
「世の中に影響を与えるためには、フィードバックが必要です。デザインとは共通認識を備えた人工物を作ることであり、それはフィードバックによって可能になります。」
この記事にもありますが、スリーマイル島事故の原因がUX/UIによるものかはハッキリしないものがあります。
たぶん一因ではあるのでしょうが、UX/UIの改善によって事故を防げたのかもハッキリしません。
著書はUX/UIについての本なのでそういう結論になるのだと思いますが、UX業界(そういう業界があれば)のマッチポンプのようなストーリーになっていないことを願います。
Lessons from the Scariest Design Disaster in American History >>
User Friendly: How the Hidden Rules of Design Are Changing the Way We Live, Work, and Play >>
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ジェシー・ジェームス・ギャレットは、2001年にUXコンサルタント会社Adaptive Pathnoを共同設立し、『The Elements of User Experience』の著者でもあります。
彼が現在のUXデザインを取り巻く問題について語ってます。
UXデザインの決定プロセスや、UXデザインの役割が、UXデザインの本質から離れてしまっていることを嘆いています。
以下は部分的な抜粋です。
「20年前、ユーザーエクスペリエンスデザインが研究室から本格的な産業へと発展したとき、その未来はとても明るいものでした。UXは、一夜にして急成長産業になりました。・・・奇妙に聞こえるかもしれませんが、UXにとって、ある意味では決して良い状況ではありません。実際のデザイン作業の多くは、かつてないほど質の高いものになっています。しかし、これらの明るい兆しの裏には雲があります。」
「私たちの多くにとってUXの暗黙の約束とは、探究心と洞察力による経営という哲学でした。新たな創造的探求が人間の行動ついての新たな疑問につながり、それが新たな製品や価値の機会を定義する原動力となりました。また、UXの文化は、私たちが作ったものを使う人々や、彼らの人生や経験によって私たちとはまったく異なる行動をとる可能性のある人々に対して、ある程度の敬意や思いやり、そしてシンプルな謙虚さを必要としているように思えました。・・・人間中心のデザインの高まりが、人間中心の企業への道を切り開くことになるだろうという理論です。」
「最近の多くの組織におけるUXプロセスは、「UX劇場」(2018年にTanya Snookが考案したアイデア)に過ぎません。無知なビジネスリーダーや希望に満ちたUXの新入社員に対して、しっかりとしたデザインプロセスであるかのように見せかけるために、費用対効果の外観を正当性で磨き上げているのです。この分野の言語やアイデアが、実践の根底にある原則を知らず、気にも留めなかった外部の人間によって共謀され、堕落していくのを目の当たりにしてきました。」
「企業はスケーリングを求めますが、基礎的なUXの仕事はスケールしません。予測可能で反復可能なプロセスや一般的なクッキーカッターのような役割には適していません。なぜなら、UXの仕事は、有機的に進化するビジネスの最先端を特徴づける、未知で、滑りやすく、定義しにくい問題を扱うものだからです。」
「学校ではUXは高貴で創造的であると説明されていたのに、就職してみると、製品をリリースするという名目で高貴さや創造性を発揮する機会がすべて切り取られてしまっているのです。・・・このような状況を招いた責任は、UXデザイナー自身にあると言ってもいいでしょう。彼らは、その仕事の価値について説得力のある話をすることができず、資金を得るために必要な信頼を築くことができませんでした。UXがプロダクションレベル以上の価値を提供するという約束を果たせなかったとしたら、それはそもそも間違った約束だったのかもしれません。言い換えれば、もし私たちがすべて間違っていたとしたら、ということです。」
読んでいるうちに、なんとなく昔のことを思い出してきました。
個人的な印象ですが、UXの少し前に「ユーザーセンタードデザイン」が流行ってたと思います。
もともとは善意と配慮に基づいたデザイン理論だったと思いますが、ビジネス側の人たちには「ユーザーの行動をコントロールして活性化できるかも」という曲解と期待を与えた気がします。
UXはこの流れを汲んでビジネスの現場に受け入れられた気がします。
それまでのユーザーセンタードデザインより実践的で、ビジネス要件のKPIを設定できそうなUXデザインのコンセプトは、スムーズに受け入れられて急成長した気がします。
UXデザインは、最初に期待されたことがUXデザインの本質ではなく、急成長した理由もUXデザインの本質ではなかったかもしれません。それでもUXデザインは人の認知に重要な役割を担うデザイン分野だと思うので、ただのバズワードにならないでほしいです。
I helped pioneer UX design. What I see today disturbs me >>
UX Theatre: Are You Just Acting Like You’re Doing User-Centered Design?
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UXデザインの不都合な真実 >>
課題解決の過程を、jacascriptのコードを交えて説明してくれてます。
難しいですが、勉強になります。
設定された主な課題は下記の4点だそうです。
■Scrubbable Photos(スクラブ可能な写真)
フォトライブラリのどの部分にも素早くジャンプできる。
■ジャスティファイドレイアウト
ブラウザの幅いっぱいに写真を表示し、各写真のアスペクト比を維持する。
(正方形の切り抜きしない)
■60fpsスクロール
何千枚もの写真を閲覧しても、ページの応答性を維持する。
■瞬間的な操作感
読み込みにかかる時間を最小限に抑える。
まず、このくらい明確に課題を設定できたら、成功間違いなさそうです。http://designers-union.com/#
米国ではコロナワクチン接種をオンラインで予約するようですが、その申し込みサイトのデザインに問題があるというレポートです。
リサ・デベッテンコートさんが75歳の父親がニューハンプシャー州のコロナワクチンのウェブサイトに登録するのを手伝ったときの経験だそうです。やや米国政府への愚痴っぽい記事ではありますが、日本でも同じことが起きる可能性があるのかも。
混乱させるような指示や分かりにくい手順が多く、予約が完了したと思ったとき、実際には、ニューハンプシャー州の最初の承認プロセスを完了しただけだったそうです。
米国の医療システムは個別に独立して構築されたため、標準化されていないそうです。
それらのシステムにはUXの専門家はほとんどいないそうです。
また、疾病対策予防管理センター (CDC) による、コロナワクチン接種を管理するための、VAMS (Vaccine Administration Management System) という無料で提供されるシステムがあったそうです。
このシステムはほとんど失敗に終わったそうですが、この構築のためにCDCはデロイト社に50億円くらい払ったそうです。
デベッテンコートさんは下記のような指摘をしています。
■誰のためにデザインしているのかを明確にし、困難なケースをターゲットする。
身体の不自由な人、PCやスマホに慣れていない人、通信速度の遅い人にも配慮してデザインされるべきだそうです。
■初期のプロトタイプでユーザーテストをする。
どんなに優れたデザイナーでも、自分たちだけではすべてを正しくできないことを知っています。
代表的なグループの人々が初期のプロトタイプを使用するのを見て、その結果を慎重に検討すべきだそうです。
■グッドデザインを組織の優先事項にする
優れたデザインが重要であると誰もが主張していますが、それを実現するために必要な投資を行うべきだそうです。
「パンデミックの影響で、階級に関係なく、すべての人が、資金不足や設計不足のシステムを初めて利用することを余儀なくされたことです。この気づきが、グッドデザインの重要性を強調し、一日も早く大幅な改善につながることを期待しましょう。」
申請フォームのデザインはUXの重要箇所で奥が深いですね。
G Suite として提供されていたサービスのリブランドのようです。
Gmailのアイコンがすっかり変わって、Mの文字と封筒のダブルイメージはなくなって、Googleなアピアランスになるようです。
「Google の新しい Google Workspace ブランドには、より優れた連携、利便性、柔軟性を備えたエクスペリエンスが反映されています。また、アイコンもそれを表しています。今後数週間以内に、Gmail、ドライブ、カレンダー、Meet のほか、同ファミリーの一部であるドキュメント、スプレッドシート、スライドなどの共同編集可能なコンテンツ作成ツールで、新しい 4 色のアイコンが表示されるようになります。このアイコンには、あらゆるユーザーのための統合されたコミュニケーションとコラボレーションのエクスペリエンスを構築するという Google の取り組みが表されています。」
コロナ禍でのワークスタイルの変化に対応しながら、Microsoft Officeなどへ対抗しようということでしょうか。
Googleのサービスは、PCでChrome以外のブラウザから使うときの動作をもっとなんとかしてほしいです。
オンボーディングとは、利用者や加入者がいち早く使い方に慣れて習慣的に利用できるよう導くための機能やコンテンツ、またそのようなプロセスのことです。元記事は長文ですが、よくまとまってる気がします。
はじめて無料トライアル版を使ってみたユーザーをどのように定着させるのか、そのためにオンボーディング段階でどのようにユーザーと永続的な関係性を構築するのか、その方法を解説してます。
新しいサービスやプロダクトの有用性を信じてリリースしても、ユーザーはそれを理解しないし、ユーザーにはもっと大切な関心事があることを前提として考えるべきだそうです。
ユーザーの目的を明確にして、適切なガイダンスを提供することは当然として・・・
懇切丁寧なガイドを提供するだけでなく、ユーザーが自ら行った事に対して素早く適切に結果を提供することが重要なようです。
ユーザーを「不確実」と感じるような状態にしない事が、ユーザーのエンゲージメントを維持することに繋がるそうです。
さらに、ユーザーに段階的な目標を与えて「ご褒美」をあげたり、アクティブなユーザーには「お墨付き」を与えることも有効とのこと。(個人的には嫌いな手法ですが・・・)
48時間以内にオンボーディングを完了しないユーザーは顧客として定着する可能性は低いそうです。
デジタルヘルスの促進には、スマホから遠ざかるべき。
スマホでできることはだいたい紙とペンでできるでしょ・・・という、ほとんどアートのコンセプトムービー。
1日1枚をプリントアウトして、1日の空き時間の退屈しのぎにするなら、それでいいかも・・・・と思えてきます。
Google’s big plan to fight tech addiction: A piece of paper – MIT Technology Review >>
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スマートフォンのタスク切り替えに物理的な空間を再現する『MAGIC UX』
このふたりの動画のコンセプトは秀逸だと思います。
Woah, what’s this? A shiny new https://t.co/q4wnE46fGs for desktop? Yup. IT’S HERE. pic.twitter.com/8y4TMzqBGa
— Twitter (@Twitter) 2019年7月15日
ユーザーからの声に耳を傾けてリデザインしたというメッセージ。
いままでのデザインと比べると、読んで楽しむよりも、ユーザーが実行できる機能が前面に押し出しされた感じがします。
基本的にはスマホ版のデザインに近づける方向でリデザインしたようです。
慣れてしまえば気にならないでしょうが、個人的にはちょっとだけ残念な方向な気がします。
twitter上で実際のユーザーからの寄せfられているコメントもおもしろいです。
「ひとりのユーザーの声を取り上げて、それが広く普及したコンセンサスのであるかのように伝えるのはSNSがもたらした最悪の手法だ。」というコメントや、「編集ボタンは?」というコメントはごもっともだと思います。
下記URLからどうぞ
https://twitter.com/grandayy/status/1150948766851174402
チャート(図表)をデザインするためのガイドラインとされていますが、アナリティクスのダッシュボードなどのデータ分析ツールのUIのためのガイドラインのようです。
情報デザインで聞いたことのある感じですが、あらためて勉強になります。
『データに正直になる』
データを歪めたり混同したりしない。
透明性と明確さを示す。
『ユーザーを助ける』
ユーザーがデータを探索しやすいUIを提供する。
「モーションとインタラクションを利用して、文脈、洞察、関連性、因果関係を明らかにして、ユーザーの理解、分析、推察をサポートするべきです。」
『ユーザーを喜ばせる』
ユーザーが想像しているよりも速くてダイナミックな体験を提供する。
高速で反応の良いインタラクション、トランジション、モーションを考慮する。
『焦点を明確にする』
わかりやすくする。認知負荷を軽減して、ユーザーをデータの洞察と理解に素早く誘導する。
カラーリング、ラベリング、グループ化、ハイライト、比較 などを適切にデザインする。
『広がりを持たせる』
データの深さ、複雑さ、確実性 についてのユーザーニーズを満たす。
すべてのチャートは、できるだけアクセシブルにする。
不変の設定に固定するよりも、ユーザーによる多くの可能性を考慮する。
『構造を提示する』
階層と構造を視覚化して一貫性を向上させる。
視覚的な階層、方向、文脈 をユーザーに提供する。
グラフィックとインタラクションの統一性を高めて安定感と親近感を提供する。
英語の意図を汲み取れていませんが、学ぶべきところが多そうです。
ユーザーを夢中にさせようとして、ややサービス過剰な気もします。
くわしくはこちら。Google Design の Manuel Lima さんの記事です。
https Six Principles for Designing Any Chart >>
たしかに、どの広告表示もイラっとさせられます。
イラっとさせることで、それが広告だと認識されるならまだ善良なUXともいえる気がしています。
以前にGoogleの検索結果の上段に表示されていた広告が広告として認識されずに「最適な検索結果」と認識されていたという調査がありました。
この鬱陶しい広告の基準はユーザーがイラっとする広告の基準のようですが、広告が広告だと認識されないまま受け取られてユーザーの意思決定に影響を及ぼすようになるほうが大きな問題のような気がします。
しかも、その基準を提唱しているのが広告配信会社でもあるGoogleなこともちょっと怖い感じがします。
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