いい議論です。昔からデザインの流行り廃りはありますが、SNS映えが求められるようになったことで、一層顕著になったうえに高速になっています。流行にのることの何がダメなのか、また何が正しいのか、デザイントレンドの意味についての記事です。
ロンドンを拠点とするデザイン会社Studio LowrieのクリエイティブディレクターのMike Whiteさん、アラブ首長国連邦を拠点とするグラフィックデザイナーのShamma Buhazzaさんの意見です。
どちらも率直な意見だと思います。
以下は抜粋です。
「トレンドは『人々に受け入れられている人気のあるもの』としてポジティブに捉えるべきで、反発するようなことではない。
トレンドを好むことが、自分たちのデザインを過小評価したり、創造的な個性を軽視したり、独自のセールスポイントを軽視したりすることになるかもしれないと恐れているのでしょうか?」
「インスタグラム上の新しいトレンディなデザインの急速な流れのもう一つの欠点は、自分のデザインの実践の中でのリサーチプロセスの混乱です。人々はリサーチをしていないので、自分の基準点がどこから来ているのかさえわからないのです。だから、本当に興味深い創造的な方向性やデザインの『パスティーシュ(模倣・寄せ集め)』を見ているようなものなのです。その結果、オリジナルの洞察ではなく、誰かの出発点を再利用した、希薄化された価値のないものになってしまうのです。」
「デザイン業界ではアドビのソフトウェアがほぼ独占状態にあるため、同じシステムを使って仕事をすることが多く、一定の制限の中で自然に仕事をし、特定のスタイルを再現することができます。」
「このデザインの奔流に大量にさらされるという呪いにも、その恩恵があります。デザインのトレンドを利用することで、その作品が人々に親しみやすく、親近感を持ってもらえることがあります。親しみやすさは、認知度を高め、アクセスしやすさを生み、それは支持的であると同時にコミュニケーションにもつながるのです。」
「トレンドに飛びつくことのさらなる負の側面は『時代を超越したもの』の要素を失うことです。そうした作業は『何年も経ってもまだ新しく新鮮』に感じられます。」
「例えば、形と機能の関係です。デザインは今、形が重要なのです。デザインは機能の結果であるというスイス風のモダニズム的なアプローチを説いた教育を受けてきました。今でもそうだと主張する人もいますが、実際には今はそうではありません。」
「ある意味、グラフィックデザインはイラストレーションに近いものになってきたのか、アートに近いものになってきたのかと考えています。」
「この10年間で何が起こったかというと、いままでのアプローチは、興味に対するリターンを必要とするクライアントにとって十分ではなかったということだと思います。デザインソリューションはデザイナーが決定するのではなく、マーケティングチームからの情報をもとに、ビジネスの支出を正当化できるようなデザインワークのベースを提供する戦略に重点が置かれるようになりました。これは、オーディエンスのエンゲージメント、『いいね!』『クリック』『シェア』『保存』などを考慮したトレンドベースのデザイン決定に対する計算可能な反応によって実現されます。
「CIAのリブランドに見られるのは、デザインの美学が関連付けられている文脈を理解しないまま、トレンドに飛びついてしまった例です。インスタグラムを見て、気に入ったものを見つけるまでスクロールして、それをコピーしてしまう人もいます。」
「最終的には、トレンドが私たちの文化の定義や文化の中で起こっていることを定義しているのです。」
上記はほんの一部だけの抜粋なので、全部読んでみるのをお勧めします。
共感できると思います。
元記事はこちら
Is graphic design too trendy? >>
Every year our marketing team takes a step back from our brand, creative work, public expression and activations. We look in the mirror and ask ourselves if what we see creatively, reflects what Twitter is.
— Leslie Berland (@leslieberland) January 27, 2021
Twitterの最高マーケティング責任者のレスリー・バーランド氏が発表したこの新しいビジュアル・アイデンティティは、ソーシャルネットワークの複雑さと不完全さを表現しているそうです。
破れた紙、色あせたイメージ、擦り切れたタイポグラフィなどのビジュアルを特徴としています。
フォントはオリジナルの「Chirp」というサンセリフだそうです。
ブンランドを「不完全」なイメージで表現することはめずらしいですが、SNSの置かれている現状として正直なアプローチのような気もします。
なんとなく90年代のイメージで、当時の「オルタナティブ」のトレンドと少し似た感じがしてます。
その後のフラットなデザインは、ミニマルでクリーンで洗練と信頼が表現されてましたが、2020年代のデザインはまた違った方向に向かってるのかも。
以下はレスリー・バーランド氏のツイートからの引用です。
「Twitterとここで行われる会話は生きていて、呼吸していて、常に進化しているので、これを行います。それらは、話している人々によって定義され、彼らの声によって形作られ、毎日私たちのタイムラインを満たす画像や言葉によって刻印されています。
ブランドは私たちではなく、皆さんです。」
「Twitterでの会話は、乱雑で複雑、強烈で刺激的、陽気でばかげている、奇妙で醜い、衝撃的で美しい、邪魔で感動的です。それらは生であり、本物です。」
「私たちのロゴは変わっていません、その鳥は象徴的で生き続けています!しかし、それがどのように表示されるかを試してみます。」
元記事はこちら
Twitter Unveils Bold Visual Identity Mirroring Its ‘Imperfect,’ ‘Complex’ Nature >>
1969年から1998年まで使われていた自社ロゴをベースに、タイプフェイス、形、色を微調整してミッドセンチュリーの魅力と現代的な感性を視覚的に融合させているそうです。
デジタルプラットフォームを念頭に置いたデザインです。
フォントファミリーは「Flame(炎)」という名前です。丸みを帯びた、大胆な、美味しそうな、というイメージで「人々に一口食べさせたいと思わせるフォント」だそうです。
色は「ファイヤーリー・レッド」「フレイミング・オレンジ」「バーベキュー・ブラウン」の組み合わせに、「マヨエッグホワイト」「メルティーイエロー」「クランチー(シャキシャキ)グリーン」のサブカラーです。
バーガーキングの親会社のデザイン担当であるラファエル・アブレウ氏によると・・・
「デザインは、私たちが何者であるか、何を大切にしているかを伝えるための最も重要なツールの一つであり、私たちの料理に対する情熱を生み出し、ゲストの体験を最大化する上で重要な役割を果たしています。」
だそうです。
アイデンティティのデザインについて的確な見識のように思います。
The Burger King rebrand celebrates its design history and irreverent personality >>
「あおくんときいろちゃん」で有名な絵本作家になるまえの広告業界での大活躍など、見応えある展示でした。
グラフィックデザイナーとしての若い頃の、流行に敏感で、オシャレで洗練されたモダンな感じが、瑞々しくて良かったです。軽妙洒脱という感じ。
実現しなかった仕事もたくさんあったようですが、それでも次々と軽快に仕事を続けていったようです。
魅力的な作品だけでなく、そういう仕事への取り組み方がかっこいい印象でした。
広告業界の変化に疑問を感じて、自身の創造性の探求に向かうことになるストーリーも興味深いです。
原画をなくしてしまったのか、「スイミー」の原画展示のために、もう一度描いていたのは、なんだかとても広告業界っぽい感じがしました。
2020年のコロナ禍ではデータビジュアライゼーションはj大切な役割を果たしました。
19世紀や20世紀初頭の疫病流行のときとは違って、世界中のネットワークから収集されたデータが、21世紀のツールで視覚化されて、即時に世界中に共有されました。
これまでの人類の歴史に疫病は何度かあったでしょうが、今回のようなことはじめてかも。
ニューヨークタイムズ紙やワシントンポスト紙の記事は素晴らしいグラフィックデザインだったと思います。
下記の記事では、データ可視化の歴史の紹介からはじまって、現在のテクノロジーをどのように使っているのか、データのスケール、影響力など、現状と課題も紹介しています。
デザイナーがどのようにメタファーを使ったかについての紹介は、デザイナーがデータを扱うときの態度として、大切なことを説明してるような気がします。
■元記事
2020年の混沌を理解するのに、データデザイナーがどのように役立ったか >>
■関連記事
ニューヨークタイムズの新型コロナを報道するためのレイアウトラフ >>
コロナが世界中でどのくらい速く拡散しているのか可視化したインフォグラフィック >>
Ji Lee さんがパーソナル・プロジェクトとして20年くらい続けているそうです。
はじまりは美術学校の課題だったそうです。
「この課題は、外部のパーツを一切加えずに、単語を形成する文字のグラフィック要素だけを使って、単語の意味を視覚化するというものです。難しかったですが、言葉を「クラックする」ということには大きなやりがいがありました。だから、これは私にとって生涯のプロジェクトになりました。」
たしか美術大学で同じような課題があった気がします。
メッセージとワードとビジュアルに整合性がを持たせることができるか、
どこまでシンプルな表現にできるか、
そのメッセージは正しいか・・・などなど、
デザインのトレーニングとしていい課題だったと思います。
Indika Entertainmentのクリエイティブディレクター、James Verdesotoさんが、映画のポスターデザインにおける色の心理学に焦点を当てて解説しています。なるほど、勉強になります。
コメディーのシチュエーションを視覚的にわかりやすくする白背景の写真と赤文字のタイトル。
さらに余白をうまく使って視線を誘導しています。
スリリングなアクション映画のポスターに見られる、走る人物のシルエットと青と黒のイメージ。
そのもとは「第三の男」のポスターや90年代のジョン・グリシャムの小説の表紙にあるそうです。
低予算のインディ映画では、目に留まりやすい黄色を背景にすることが多く、これは50〜60年代のヨーロッパの映画ポスターが元ネタのようです。
最近のアクション映画のポスターは、コントラストの強い男性的なモノクロ写真にオレンジ色の炎を配置して、若い観客に訴えてるそうです。
SF映画のポスターによく見られる、ダークな青背景にオレンジ色のアクセントのポスターも、若い観客へ訴える効果があるようです。スター・ウォーズのポスターはわかりやすい例です。
ほかの動画はこちら >>
Movie Poster Remakes vs. Originals, Explained | Vanity Fair
2019年のララ・トランプ氏の投稿のtwitter投稿を見たベルギー人デザイナーのKarim Douïebさんは・・・アメリカ大統領選挙で見られる多くの選挙地図は、実際に住んでいる人々の数を表しておらず、何千マイルもの空地がトランプ氏に投票しているように見える。これはデータの可視化という点で間違っている・・・と感じて自ら修正したインフォグラフィックを投稿しました。
このインフォグラフィックでは、各州を政党別に塗り分けただけではなく、有権者の数を地理的に視覚化しています。
共和党が優勢に見えるのは、地図上の誤解であることがわかります。
このインフォグラフィックは多くのバージョンが制作されたそうです。
秀逸なのは、各州の塗り分けの地図と有権者の数をアニメーションさせたことだと思います。
有権者の数のビジュアルだけでは形が歪んでいてアメリカの国土の形との関連性をうまく認識できませんが、各州の塗り分け地図とのアニメーションにすることで関連性を理解して、状況を把握できます。
Karim Douïebさんのインフォグラフィックはこちら
Try to impeach this? Challenge accepted! >>
元記事はこちら
U.S. election maps are wildly misleading, so this designer fixed them >>
アメリカの活版印刷会社9社によるメモ帳のカバー。
ドキュメンタリー映像も味があります。
その手触りから伝統技術への愛情が伝わってきそうです。
「アメリカの活版印刷の歴史に浮き彫りにされた伝統を継承しながら、レイアウト、テーマ、メッセージは、遺産、地理、伝統、社会問題に関する個人的な表現であり、今日の活版印刷コミュニティの多様性と強さを示しています。」
アメリカのグラフィックデザインや印刷業に草の根で受け継がれていそうな、こういう伝統やコミュニティは素晴らしいと思います。
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