A candid interview with the inventors of the blockchain Photo Credit: Bob Ono

80年代後半から90年代初頭にかけてブロックチェーンの基礎を発明したスコット・ストーネッタとスチュアート・ハーバーのインタビュー記事です。
暗号通貨のためではなく、そもそものブロックチェーンがどのような概念なのかを紹介してくれています。
「デジタル指紋」「ハッシュ」「序数」など難しいワードが多くて正しい理解は難しそうですが、できるだけわかりやすく説明してくれています。
ブロックチェーンがもたらす未来について、本質的で中道的で有用的なビジョンに思えます。
そして、サトシ・ナカモトの功績が素晴らしいこともわかります。

「デジタル署名と暗号ハッシュ関数は1989年秋までに提案、実装され、広く理解されていました。これらのツールは、特定のドメイン内の記録の整合性を保証するために、単一の信頼できる主体(人物、ソフトウェア、ハードウェアなど)を必要とするという、比較的単純な解決策を示唆していました。」

「スコットと私は電子マネーを発明しようとしていたわけではありません。実際、暗号コミュニティでは1980年代に遡り、純粋にデジタルなマネーを作るための取り組みが既に進められていました。私たちの焦点はより広範で、電子記録を含むあらゆる記録の完全性について真摯に懸念していました。‍」

「本質的には、暗号通貨よりもNFTのコンセプトに共感していたんですよね?NFTを芸術作品、証書、特許、そして様々な申請を検証する手段として考えると、当初の目的と一致しているように思えます。」

「特にビットコインの文脈においては、権力の集中が存在することは認めますが、その根底にある前提は変わりません。『誰にとっても信頼できる文書とは、すべての参加者が共同で信頼責任を共有する文書である』というものです。この概念は非常に価値があり、同様の精神を持つ多くの機関の基盤となり得ると信じています。 」

「ブロックチェーンは、信頼性を確保するための分散化への欲求と、中央集権化による業務効率化の必要性との間に、健全な緊張関係をもたらします。この緊張関係は、よりバランスと多様性をもたらすため、極端な中央集権化よりも好ましいものです。」

「さらに強調したいのは、様々なブロックチェーンネットワークが共存し、オンチェーン/オフチェーン機能といった要素に基づいて差別化できる未来を思い描いているということです。こうした機能の多様性は、活気あるエコシステムの前向きな兆候です。スチュアートと私は、ささやかな方法で、これらのブロックチェーンネットワーク間の相互運用性を促進し、コミュニティ意識を育むことを目指しています。」

詳しくは下記をどうぞ。

The Blockchain Was Invented For NFTs, Not Currency >>

アテンションエコノミー、搾取、経済格差を描いたゲーム「Zantar」

トロントを拠点とするアーティスト Mitchell F. Chan の作品です。
ゼラチン状の立方体をコントロールして、村人を食べまくって、架空の仮想通貨「ビービーコイン」を獲得するゲームです。
これは、ゲームから物語へ徐々に変容していく寓話的なアート作品です。
プレイヤーとして始めたゲームは単なる傍観者として終わります。
KevinBuist さんが書いた紹介記事「Flipping Coins」が秀逸です。

私たちはゲームをプレイできるが、与えられる主体性はほとんど幻想に過ぎない。
中毒性のあるインターフェース、そしてアテンションエコノミーに翻弄されて、遠く離れた場所にいる経済支配者たちによって貧しい農村コミュニティが搾取される構造が描かれています。

下記のURLからゲームをプレイできます。

Mitchell F. Chan >>

Zantar >>

Flipping Coins >>

KevinBuist >>

2025年11月8日 アート

「飲み会のカルチャーが帰ってきた」というビール会社らしいCMです。
人間味がある演出でオフィスに戻る人を励ますメッセージになっています。

コロナ禍のハイネケンのキャンペーンは、素晴らしいと思っています。
人が集まる場所で提供されるビールの会社として、人を支える取り組みをして、人間関係を祝福するメッセージを送って、ビールの会社として適切なブランディングをしています。

また映像の演出も秀逸だと思います。現実に起こっていることと演出上のファンタジーを上手に使い分けています。
世界的な惨禍を扱いながらファンタジーを伴う演出をするのは、やり方を間違えるとブランドを大きく毀損するリスクがあると思います。

広告やブランディングに関わって仕事をする者として、見習いたいです。

個人的には、リモートワークは企業のあり方を根底から考え直す重要な機会だったと思っています。

【関連記事】

コロナ禍の終わりを告げるようなハイネケンのCM『A Lockdown Love Story』>>

閉じられたシャッターに広告を掲出することで休業中のバーを経済的に支援するハイネケンのキャンペーン『Heineken Shutter ads』>>

メガメェェェェェェェェガァァァァァァァァァァァァァァァ⤴︎

2025年11月2日 未分類

まだ使っていないのですが、楽しそうです。
これからは、このブラウザに最適化したウェブサイトを制作するようになるかも。

このブラウザはウェブのビジネスやエコシステムに負荷が掛かるようです。
また、倫理的な点についても問題が指摘されているようです。

「このブラウザはAIアシスタントをブラウジング体験の中心に据える。ChatGPT Aliasは常時表示される「Ask ChatGPT」サイドバーを導入し、ユーザーがどのウェブページとも直接対話できるようにする。商品リストをハイライトすれば仕様を比較し、レシピを開けば食材を買い物リストに追加できる。」

「Chromeは長年検索の代名詞だったが、Atlasはブラウザの役割を再定義する。情報へのゲートウェイではなく、情報を解釈する知的な層となるのだ。」

「——特にデータ透明性、広告収益、生成モデルを介したインターネットの長期的な持続可能性に関する問題が顕在化している。」

「この変化は新たな疑問も生む。主に、ユーザーがフルページを閲覧する代わりにChatGPTの要約に依存する傾向が強まった場合、従来の出版社や広告主がどうなるかという点だ。」

いまのところ、AIができることは高速な剽窃なのかもしれません。
でもこれが、ネットビジネスやウェブサイトにとって転換点になるような気もします。

OpenAI launches ’ChatGPT Atlas’, its browser that lets you talk to the internet >>

印刷が死んでいないのなら、誰がそれを生き続けさせているのでしょうか?

印刷メディアの現状と未来についての、熱く、濃く、読み応えある記事です。
「印刷は死んだ」という絶望的なミームに対して、光明をもたらす回答のように感じます。
以下は、ほんの一部の抜粋と意訳です。

「つまり(印刷物の)物理的な制作過程は、私たちがデジタルへと溶け込むにつれて、ますます一般的ではなくなりつつある知識体系である。」

「材料は高騰し、市場は縮小し、伝統的な印刷業界の専門知識は失われつつある。そのため、小規模出版社として立ち上げるのは、客観的に見てかつてないほど困難になっているかもしれない。印刷物の現在の魅力と独自性は、アーティストやスタジオが印刷という名のもとで、経済的に持続可能な事業を必死に育てようとしている状況とは対照的だ。こうして、印刷物は全般的に「死んだ」というあまりにもありふれた宣言が広まっている。」

「私たちはやり遂げたと確信しています。アーティストも私たちの成功を知っています。機械のグリースがまだ爪の裏に残っています。素晴らしい仕事をしたと確信しながら、夜は安心して眠りにつくことができます。」

「撮影監督は、カメラアングル、動き、静止、フレーミング、そしてミザンセーヌを操ります。それは、私たちが紙、製本構造、インクの不透明度、そして物質性を操るのと同じです。」

「本をデザインしてから、後から制作方法を考えるようなことは決してしたく​​ありません。制作は、本のデザインとコンセプトの最初から織り込まれているのです。InDesignでレイアウトをあれこれ試しながら紙を選び、書体の方向性を決めると同時に、本の製本構造も決めているのです。」

「製版から機械の操作まで、そのプロセス全体が多くの人にとって全くの謎であり、もはや深く掘り下げて研究する意欲を失っている」

「ブックフェアでは、人々が印刷物に持ち込む様々なアイデアやアプローチを目にすることができます。私たちの経験の多くがデジタル化されている現代において、物理的な印刷物には異なる種類の価値があります。それは、単なる情報伝達ではなく、繋がり、技術、そして実体感といった価値なのです。」

「本、印刷物、DIY出版への渇望は高まっていますが、同時に、印刷業者、出版社、アーティストにとって、経済的に持続可能な印刷事業を育てることはますます困難になっています」

「私たちの経験の多くがデジタル化された世界では、物理的な印刷物は異なる種類の価値を持ちます。それは、純粋な情報伝達というよりも、つながり、職人技、そして実体性に関する価値です。」

「アクセスしやすくするためには、ものをアクセスしやすくする必要があり、そのように価格設定を真剣に考えなければならないことを、人々や企業は本当に理解する必要があると思います。25部限定で3万ポンドのエディションをリリースするだけでは、アクセスしにくくなります。誤解しないでください。それらは素晴らしいものですが、人々がそれを買わなければ、業界は衰退します。」

「印刷物は日常的なものではなく、はるかに特別なものへと変化しました。これが印刷物の入手しやすさに不安をもたらすのか、それとも将来的な影響に安心感を与えるのか、まだ分かりません。この変化は、小規模出版社の運営を今日の状況に理想的なものにしています。大量生産と競争するのではなく、小規模出版社は、それぞれの作品に深い思慮と配慮、そして価値を込めた限定版に注力できるのです。」

「この視点から見ると、印刷は衰退しているのではなく、ただひたすら待ち構えているだけだと思います。」

「インターネットによって印刷物は死ぬ」という話は30年以上前から聞いてきました。
そして今、印刷物の課題はクオリティではなくコストになったようです。
この課題はビジネスとして致命的になりかねない課題で、印刷に従事する人たちはこの解決策を持ち合わせていないように思われます。

Video Killed The Radio Star」を聴きたくなりました。

If print is not dead, who’s keeping it alive? >>

ウィリアム・マパン

アートにおけるコードという素材と媒体について、視界を広げてくれるようなインタビュー記事です。
ウィリアム・マパンさんはソフトウェア開発者としての経歴を持つフランスのアーティストで、コーディングと絵画の関係や制作プロセスについて答えています。

「2016年頃、パリの展覧会で初めて「ジェネレーティブアート」という概念に出会ったんです。「ああ、ここに何かが確かに起こっている」と気づきました。」

「コロナ禍を境に、アート活動を優先させることを考え始めました。隔離生活の中で多くの人がそうだったように、孤立すると内省が始まり、自問自答し、時間の使い方を考えるようになるのです。そしてNFTの波が到来しました。世界が突然デジタルアートに関心を示し、既に続けていた活動に収益化の道が開けたのは、絶妙なタイミングでした。」

「プログラミング言語自体は重要ではありませんが、通常はJavaScriptを使います。そうすればウェブ上で作品を共有できるからです。」

「コーディングと絵画の両方で7~8年の実践を経て、ようやく望む成果を挙げられる段階に到達したと感じています。」

「AIを多用すればするほど、アルゴリズムへの制御を失います。コードが芸術的媒体である場合、この制御は極めて重要です。コーディングは物事を異なる視点で捉える力を与えてくれます。AIへの依存が強まりすぎれば、その力を失うのではないかと懸念しています。」

石、木、顔料、壁、布、など、遠い昔から身近に手に入るものがアートの素材と媒体になってきたのですから、javascriptがアートの素材になるのは自然なことかも。

William Mapan on blurring code, paint, and generative art >>

2025年10月11日 Generative Art

ヤノベケンジ アトムスーツ

シャロン・ロックハート Goshogaoka

村上隆 ポリリズム

バブル、低迷、テロ、インターネット・・・といった時代の流れの中の「日本の」現代美術を振り返る展示でした。
懐かしい作品に会えました。見逃して忘れていた作品もあって楽しかったです。

昭和を通して描かれてきた大きくて普遍的な物語から、個人的な小さな物語に移行していったことがわかる展示でした。
そのテーマも2010年以降のSNSの台頭で霧散していったような気がしました。

遊び心がある作品の楽しい展示でしたが「数十年後に意味ある文脈に位置づけられるのか?」という気もしました。
そういう行く末のなさも「日本の現代美術」なのかも。

時代のプリズム:日本で生まれた美術表現 1989-2010 >>

2025年10月4日 アート

AIが私たちをどう似通わせるかを描いたコミック

研究によれば、AIの使用は私たちの集合的な創造的個性を均質化するそうです。
それがどのように起こるのかを、漫画で説明してくれてます。

漫画の内容は既視感もあり少し極端かもしれませんが、記事内のテキストで紹介されている調査結果を読むと納得させられるものがあります。
以下はテキスト部分の抜粋です。

2024年、36名のChatGPTユーザーを対象としたオンライン実験では、AIの使用が個人ユーザーの創造的アイデア数を増やす一方で、グループレベルでは「ユーザーが意味的に区別されにくいアイデアを生み出す傾向」が確認された。

別の研究でも同様の結果が得られた。今回は短編小説作家グループを対象としたもので、各作家はAIを活用することで個別に「より創造的な」物語を執筆できたものの、全体として新規コンテンツの範囲は狭まった。

AIのツールが十分に制御可能であり、デザイナーが探求する十分な時間さえあれば、AIは創造的表現の能力を阻害するのではなく、高めるはずだ。問題は、AIとの関わりが集団の豊かさを均質化することなく、個人の創造的潜在能力を確実に拡大させるにはどうすべきか、ということになる。

AIとの協働関係を改善するには、まず「画一化」がどのように生じるかを理解する必要があります。

このテキストと、このあとに続く漫画を見ると、均質化をもたらしているのはAIではない気がしてきます。
お金のないクライアント、時間のないデザイナー、プレッシャー、これらが均質化をもたらしいているようです。

90年代にグラフィックデザインがデジタル化して以降、均質化が進んだ理由もよくわかった気がします。
この均質化は個人レベルではなく、デザイン業界全体レベルで起きていることであり、その影響から抜け出すのは難しそうです。

元記事は「Light and Shade」というAIと創造性についてのシリーズ記事のひとつです。
他の記事もおもしろそうです。

The great sameness: a comic on how AI makes us more alike >>

2025年9月27日 デザイン

Instagramが初の公式iPadアプリ

いままでなかったことを知りませんでした。
iPhoneユーザーよりもiPadユーザーの方が行儀が良くて、良いコンテンツを提供してくれそうな気がします。
そういう健全なエコシステムが、より多くの収益をもたらすようになるって、TikTokとの違いになるのかも。

Instagramデザイン責任者のブレット・ウェスターベルトのインタビュー記事の抜粋です。

「iPhoneが技術の収束点だった。iPhoneは事実上のプラットフォームとなり、その上で、そしてその周りでデザインが行われるようになった。しかしここ数年、再び分岐点に差し掛かっている感覚を強く抱くようになりました。Instagramの将来像とインターフェースの重要性を検討する中で、柔軟に対応し、こうした新たなフォームファクターへ拡張する必要性を強く確信したのです…コミュニティが存在する場所に存在するためです。」

「iPadで初めてInstagramを開くと、ストーリーがバブル状に上部表示され、中央にメディアフィードが並ぶ、従来のInstagramの見た目は変わらない。最初に気づく大きな変化は、画面左側にナビゲーションバーが配置されたことだ。二つ目の大きな変化には一瞬戸惑うかもしれない:中央のフィードがメインフィードではなくなった。代わりに表示されるのはリールだ。Instagramは大きな画面の動画でユーザーを迎える(縦向きモードでは、画面いっぱいに広がるリールが映画のようなスケール感をもたらす)。」

それほど熱心なインスタユーザーではないのですが、利用しない理由の多くはUIの使いにくさです。
ユーザーがやろうとしいることと、操作、結果、の間に要素や条件が多すぎる気がしてます。
デザインを決定する過程で、ユーザーよりもコミュニティを重視しているのかも。
あと、PCだと使える機能が限定されるのも、好きになれない理由でした。

Instagram finally launches native iPad app after 15 years, with a design to take on TikTok >>

Instagram is thinking bigger than the iPhone >>

2025年9月6日 UX / UI