経済的な不確実性の中で業界がシフトし、多くのデザイナーが独立を目指す中で、10人の創業者にデザインビジネスを始めた頃に知っておきたかったことを取材したそうです。
どれも豊かな経験の言葉に思えます。この春から仕事を始めたデザイナーの糧になりそう。
以下は意訳と抜粋です。
私たちは仕事に導かれ、うまくいったこととそうでないことの間に線を引くことができた。
自分自身の視点に忍耐強くなり、スタート地点がゴール地点ではないかもしれないことを受け入れるのだ。
私のアドバイスは、ノーと言うことを恐れないこと。
正しくないことに取り組んだりして、あまりにも多くの時間を無駄にした。
そこで私は、楽しむためにビジネスを成長させることにした。
私にとっては、自分の仕事に疑いを持つことは健全なことです!
自分の能力を揺るぎなく信じて取り組むと、失敗する可能性が高くなると思います。
この業界での成功が一人だけのゲームではないことを忘れないことです。
最初のころは、プロジェクトを細かく管理し、常にデザインを練り直していた。
今となっては、「任せること」はチーム・メンバーに成功への責任を与え、彼らの成長と満足のため、そして私自身の幸福のために不可欠であることに気づいた。
私のキャリアの初期に、誰かがこう言ってくれていたらと思う。「意見を持ってもいいし、毅然としていてもいい 」と。
私もう10個の選択肢を考えて先延ばしにするよりも、あるアイデアを前に進めたほうがいいときが来るのだ。
(キャリアの初期は)勝利は大きく感じられ、試合は簡単に感じられる。負けは個人的に大きな痛手となり、疑念が忍び寄る。内面が揺るぎないものでなければならない。自分の直感と周りの良い人たちを信じるように、誰かが言ってくれればよかったんだけどね。
ビジネスを始めたとき、法人化の仕方、請求書の書き方、税金の払い方など、知らないことがたくさんありました。やりながら学ぶことで、気の遠くなるような面倒な計画を立てず済んだ。
もちろん、ビジネスを続けるには努力と運が必要だ。・・・私は自分のものを持ちたいと思うあまりに長い時間を費やしてしまった。特別な方程式がないこと、「準備」が必要ないことに気づいていたら、もっと早くやっていただろう。
ひとつだけ知っておきたかったこと?
必要なのはコミットメントとエネルギーだ。それが、ビジネスをする人としない人の唯一の違いだ。
What designers wish they’d known about running a business >>
5つのシフトについての洞察です。「希望」をテーマにしているようで、フロッグデザインらしいヒッピー的な視点があります。
それぞれの「シフト」について「増えるもの/減るもの」「現れるもの/消えるもの」「繁栄するもの/衰退するもの」が紹介されています。
また、その兆しとしての実例も紹介されています。
シフト1:潮の干満:次に取って代わられる消費者の行動や商習慣とは?
テクノロジーの進歩は、シンプルさへの後退をどのように支えることができるのか?
「今こそ、テクノロジーへのアプローチを進化させる時だ。」
現れるもの:認知的負荷を軽減する意図的に静かな製品
消えるもの:常時オン、通知多用のデジタル・インタラクション
シフト2:自然の力: テクノロジー、文化、ビジネスは、人と地球に次にどのような影響を与えるのか?
企業はどのようにして社会的・環境的包摂の余地を作ることができるのか?
増えるもの:意思決定における倫理の測定可能な統合
減るもの:役員会での議論を支配する財務上の利益
シフト3:機械のビジョン AIは私たちの生活にどのような影響を及ぼすのだろうか?
AIが拡大する影響力を形成するために、私たちはどのように相互関連的なアプローチを取ることができるだろうか?
「多くのAIのユースケースは、コスト削減と効率化に焦点を当て、そのような利益はエンドユーザーではなく株主が受け取る。EUのAI法のような新たなAIガバナンスが進行する中、規制や倫理ガイドラインを導入することで、AI開発が人間の福利を優先し、労働者を保護し、自立した思考を育むことを保証することができる。」
「「人々の生活を劇的に改善するユートピアとしてのAIのビジョンは、すでに挑戦されている。現在、機械は人々のために設計されているのではなく、ビッグテックや産業のために設計されているのだ。」
YES:人間の集中力と批判的思考の重要性を高める
NO:AIは批判的思考を阻害してコンプライアンスを逸脱する
シフト4:次元の融合: 従来は異質だったどの世界が次に交わるのか?
AIが私たちに異なる思考を促し始めたら、それはどのようなものになるだろうか?
「異なる世界がひとつになれば、まったく新しい世界が可能になる。」
「人間の推論と知性がAIに織り込まれ、現在のコピー&ペーストやプロンプトベースのアプローチを超えるようになる。」
組み合わせる:人間の直感の有機的で創造的な価値 + 機械知能の追跡可能性と洞察力
シフト5:新しい地平線: 一歩先を行くために、私たちはどのような課題を克服する必要があるのだろうか?
もし、災害ではなくユートピアを念頭に置いてデザインしたらどうなるだろうか?
「気候変動、地政学的な不安、世界的な健康危機の中で、戦略的な先見性は、最悪の結果にのみ備えることになりがちだ。しかし、理想的なビジョンを定義しなければ、シナリオ・プランニングは消極的で無力なものになりかねない。」
「ビジネスリーダーは、2年前には起こりそうもないと考えられていたような事態への備えに習熟するようになるだろう」。
まず:ユートピアを実現する力を感じる
そして:不安な未来に備える
OpenAIの画像生成ツールによってスタジオジブリ風のビジュアルを生成できるようになり、ネット上ではAIが作ったコンテンツが続々と登場したことについてのスタジオジブリのコメントを引用した記事のようです。
以下は、元記事からの引用です。
「OpenAIは、そのツールが特定の存命のアーティストの模倣をブロックする一方で、ジブリのような広範なビジュアルスタイルは許可するとしている。この方針は、オマージュと流用の境界線を曖昧にしているとする批評家たちの懸念を呼んでいる。」
「アニメ業界の構造的な問題にも光を当てている。日本では熟練アニメーターの不足が深刻化しているが、その一因として、若い世代が従来のアニメ制作に伴う過酷な労働時間と低賃金に耐えようとしないことが挙げられる。AIはこれらの課題に対する現実的な答えのように思えるかもしれないが、五郎氏は、その利便性が感情の豊かさを犠牲にしてはならないと警告する。」
「AIが進化し続ける中、アニメーションは「何が作れるか」ではなく「何を作るべきか」という決定的な問題に直面している。」
AIを利用するときの人間の役割が「決定的な問題」に関する事項に限定されるのはその通りな気がします。AIによって、デザイン、クリエイティブ、マーケティングのワークフローが変わって、業界の構造や力関係も変わるかもしれません。
個人がこの変化に対抗するのは絶望的に難しいでしょう。
そんなときに「〇〇は今後も変わらない」という言い回しは心安らかでいられるのかもしれません。
とても納得できる記事なのですが、ここから読み取れることとして、AIとアニメ産業はそれぞれ剽窃と搾取の上に成り立っているということになる気もします。
AIを利用した業界がディストピアにならないことを願っています。
Studio Ghibli says AI may create anime, but Hayao Miyazaki’s storytelling cannot be replaced >>
1990年代に描かれたディストピアっぽくて、架空で未完の歴史物語のような感じでした。
ギラギラしたビジュアルが投影されたモニターを通り抜けた後の、最後のインフォグラフィックのパネル展示が圧巻でした。
2025年の私たちはデジタルな媒体とコードに囲まれて暮らしています。それでもデジタルなアート作品ではバーチャルな世界であることが前提になるのか?
プレイヤーとして何かに変身してダンジョンを歩き回る没入感が必要なのか? ゲームにしなくちゃダメなのか? なぜ現実ではないのか?
などなど、いろいろ考えさせられる展示でした。
という質問に、OpenAIのサム・アルトマンが答えています。
以下は抜粋した日本語訳です。
仕事によって違うと思います。AIによって完全に消え去ってしまう仕事もあるでしょう。しかし、ほとんどの仕事は新しいツールの登場で生産性が格段に上がり、より質の高い仕事ができるようになると思います。ウェブサイトの見栄えをよくする仕事はこれからも存在するでしょう。しかし、ウェブサイトの見栄えに対しての期待は格段に高くなるでしょう。
より良いウェブサイトが望まれて、より多くのウェブサイトが望まれて、より多くの需要があるかもしれません。また(制作上の無駄を?)削減できることもあると思います。
今までにない仕事も登場するでしょう。カスタマーサポートのような仕事はAIが最初から最後までやってくれるようになると思います。
グラフィックデザインにもそうような例があります。(グラフィックデザインにおける)「テイスト」は依然として非常に重要です。
グラフィックデザインは、紙とペンの時代からコンピューターのツールが登場して、より多くのことがより良くできるようになりましたが、それでも世界には優れたグラフィックデザイナーがまだたくさん必要でした。
(AIによる)新しいツールが登場したことでグラフィックデザイナーのワークフローが変わることは間違いありません。一部の人が報酬を得ていた仕事も、今後は支払われなくなるでしょう。
しかし、私の考えでは、これからもウェブサイトを(グラフィックデザインとして)美しく見せるような仕事は存在するでしょう。
これまでも、そういう仕事をしている人たちの中には大きな報酬を得ている人もいます。爆発的にウェブサイトが増えたことはグラフィックデザインの需要を高めたのかもしれません。
新しく登場した仕事としては「プロンプトエンジニア」があります。そんな仕事を想像することも難しかったでしょう。
(新しい仕事が生まれると最初は嘲笑されます。プロンプトエンジニアを多くの人は真剣に受け止めていません。これからプロンプトエンジニアを仕事にすることでステイタスを失うことはないと感じさせる方法はありますか?・・・という質問に対して)
私は若い頃にコンピュータープログラミングを学びたいと思っていましたが、周囲の大人からは”ホビージョブ”ではなく医者か弁護士のように本物の仕事に就くように言われました。
彼らが理解していない何かを、私は理解していると思っていました。
そして、物事がどうなるかについて、自分自身の信念を持つように強く勧めています。
歴史的に価値があったり、高い地位の仕事でなかったりするからといっても、将来もそうだというわけではありません。これは技術進歩のようなものです。
仕事と技術進歩についての、バランスの取れたいい話のように思います。
個人的にも90年代に、グラフィックデザインのワークフローがアナログからデジタルに変わる過程を体験しましたが、アナログな仕事がデジタルに置き換わったときに、新しいツールができたと認識したデザイナーよりも、新しいメディアが登場したと捉えたデザイナーの方が機会と報酬に恵まれたような気がします。
また、技術進歩で仕事が変化していくときには、新しい分野の人たちと出会う機会を大切にするのが良いかもしれません。
ニューヨークのメトロポリタン交通局(MTA)によると、視覚的に大胆でユーザーセンタード・デザインになっているそうです。
マッシモ・ヴィネッリの1972年の路線図に近いアプローチになっています。
ヴィネッリの1972年のミニマルなデザインの路線図には不満も寄せられ、物議を醸したそうです。
1978年には、MTAの地下鉄路線図委員会の委員長だったジョン・タウラナクやヴィネッリ本人が登壇した公開討論が行われ、ここでタウラナクのアプローチが勝利し、曲がりくねった路線と地理的に正確な描写のスパゲッティ版の路線図になりました。
新しい路線図は、ヴィネッリのミニマルなシンプルさと、タウラナクの地理的アプローチをミックスさせたそうです。
MTA会長兼CEOのヤンノ・リーバーは「デザイン志向の乗客はこの新しい地図でヴィネッリをより多く目にするかもしれないが、本当のスーパーファンはタウラナクの地図で確立された色を認識するでしょう。」と言っています。
詳しくは下記のリンク先の記事でどうぞ
New York City’s new subway map is designed to help you not get lost >>
https://www.fastcompany.com/91310736/new-york-city-new-subway-map-vignelli
【関連記事】
1978年、ニューヨークの地下鉄路線図をめぐる討論会。
https://designers-union.com/blog/archives/10191
Studio Ghibli-inspired memes and portraits made with ChatGPT are flooding the internet
The trend emerged after OpenAI released its new images feature in GPT-4o. pic.twitter.com/Ssq1IUEDkg
— Sportskeeda Anime (@Anime_SKD) March 27, 2025
GPT-4oモデルがリリースされた直後から爆発的にSNSにアップされました。
サム・アルトマンが「GPUが溶けている」というくらいです。
とても楽しい画像ツールですが、基になったデータに対しての許可、クレジット、報酬なしにスタイルを模倣するサービスで収益を得ることに疑問もあるようです。
いろいろAIツールがあっても、その生成物は個人のSNS以外には使いどころがないような気もします。一方で、AIツールとしては個人のSNSで広く使われれば大成功かも。
OpenAI’s ChatGPT sparks viral Studio Ghibli-style art craze as copyright storm looms >>
デザイナー、イラストレーター、映画制作者、作家、写真家など、その道で経験豊富なクリエーターに、キャリアのもっと早い時期に知っておきたかったことを語ってもらったそうです。
どのようなアドバイスがあるのかは文末のリンクでどうぞ。
いくつか抜粋です。
「特に、自分のビジョンやアイデアが同僚やクライアントに否定された時、あなたはそれにひどく影響される。だから、クリエイティブと自尊心を切り離すことを学ぶのが重要だ。」
「特に若くて野心的なときには、学ぶのがもどかしいものだが、結局のところ、一夜にして成功することなどありえない。」
「誰かがあなたより声が大きくて自信があるからといって、その人が正しいわけでも、あなたより優れているわけでもありません。だから自信を保ち、自分の意見を大切にすること。」
「信頼を築き、自分のビジョンを売り込む方法を学ぶ必要がある。」
「デザインとは関係のない趣味や興味、経験は、実践の幅を広げる上で非常に重要です。クリエイティブとは何かという型にはまる必要はないのです。」
真摯な態度で同僚やクライアントと信頼を築くことは大切なようです。
どのアドバイスも「裏技」のようなものではなくて良いアドバイスのように思えます。
4月からデザイナーになる人にもおすすめです。
13 lessons creatives wished they’d known earlier in their career >>
かっこいいです。
発売予定の作品集から本人のセレクションによる展示だそうです。
ファッション写真とグラフィックの黄金時代だと思います。
不可解さや哲学や態度のようなものがあるビジュアルデザインは反抗的で魅力的です。
理解できない範囲に魅力を感じさせるのはブランディングとしても正しい気がします。
とにかくかっこいいです。
わかりやすく視覚化するだけがデザインではなさそう。
Midjourneyで作られたそうです。酷評されているようです。
長年サウジアラビアでのビジネスを縮小してきたVOLVOのカムバックを紹介する広告。
手掛けたのはドバイのクリエイティブ・エージェンシーのLion。
Lionの創設者でクリエイティブ・ディレクターのインタビューが紹介されています。
「サウジアラビアに文化的に共鳴するレンダリングを集めました。・・・ほとんどの広告は戦術的で、ブランドのストーリーテリングにはほとんど焦点が当てられていません。私たちのアプローチは違います。私たちはまず、この地域におけるVOLVOのカムバックに戦略的に沿った物語を作ることから始めました。」
なるほど、企画としては正しい感じがしますが、以下は記事からの抜粋です。
「広告に車を登場させなかったのはVOLVOのミスだと言う人もいるが、現在のところ、物体を確実に再現できる映像ジェネレーターが存在しなかったためだろう。もしこの広告の制作者が実車を作ろうとしていたら、モーフィングするプロポーションとショットごとに変化する特徴を持つ車になっていただろう。」
「現在の制作業務にAIの場所はあるが、広告全体を制作することは、少なくともまだない。・・・新たなテクノロジーを創造的革新の略語として使うブランドは、たいてい後悔することになる。」
「そこで、広告クリエイターへのアドバイスだ: AIのことは数年間忘れておくことだ。」
この広告に実車を登場させなかったVOLVOの判断は正しいと思います。
広告が話題を集めるだけのものであるなら「AIで作ったんだ」というだけで広告の役割は果たせているでしょう。
このようなAIの使い方が現在の広告におけるAIの最も有効な使い方になっているようですが、どうやら、AIがもたらす創造性や革新は、そういう次元ではなさそうです。
一方で広告デザインは、嫌われても人目を引こうとする惨めなものに見えてしまいそうです。
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