トゥールーズ=ロートレック

ソフィ・カル

ソフィ・カル

ソフィ・カル

ずっと昔に同じ東京駅周辺でロートレックの展示を見ました。
当時は10代だったのでわかりませんでしたが、ロートレックのタッチはどの作品でも一目瞭然であり、時代の雰囲気を象徴していたのがわかります。
ある時代、場所、カルチャーがひとつのタッチで記憶されるのは、コマーシャルなイラストレーターとして、これほど光栄なことはないと思います。
手で描かれたタッチが時代を超えていくのは素晴らしいです。

一方でソフィ・カルは作品に添えられたテキストがガイドになって楽しませてくれます。
認知や視覚に関するコンセプトを写真や映像で展示していて、実像と虚像、生と死、などのテーマが身近な事柄から切り出されいる感じです。
そのセンスは率直で軽妙で、親しみがありました。

なぜこの二人なのかは最後までよくわかりませんでしたが、おもしろい展示でした。

2025年1月26日 アート

久しぶりの新作です。
いつもおもしろい企画のミュージックビデオで楽しませてくれます。

64台のiPhoneで個別の動画を再生されているようです。
撮影には1000回以上のテイクが必要だったとか。
この複雑さをどうやって同期させてるのか、おもしろいです。

紹介記事を読んでわかったのですが、OK Go のミュージックビデオは時間と身体のパフォーマンスアートとして一貫してるそうです。
音楽的でポップやロックであることのコンセプトになっているかも。

OK Go’s new music video is 64 phones of pure joy >>

【関連記事】今度のOKGOのミュージックビデオ は4.2秒で一発撮影 >>

2025年1月18日 映像・映画

映画に登場するミュージシャンが豪華です。
日本での映画公開に合わせて『ヒプノシス全作品集 コンパクト版』という本も復刻されたそうです。
記念のイベントが1日限定で開催されたそうです。

ヒプノシスのレコードジャケットをリアルタイムで体験した世代ではありませんが、その冒険と挑戦と時代精神を尊敬しています。
復刻された本からは、デジタル化以前のグラフィックデザインの自由な豊かさが伝わってきます。
信じられないくらいのハードワークだったこともわかります。

映画『ヒプノシス ーレコードジャケットの美学ー』 >>

ヒプノシス全作品集 コンパクト版 >>

「イギリスの伝説的クリエイター集団“ヒプノシス”の世界へようこそ」>>

please quit redesigning everything

年末年始の休みに読んでみるには良い記事だと思います。絶え間ないUIUXのリデザインがユーザーに負担をかけていることを思い出させます。

以下は一部抜粋です

「デザイナーは、大量生産システムの中で常に特権的な地位を占めてきました。職人、芸術家、テクノクラートの見事な融合であるデザイナーは、(理論的には)消費者のニーズを満たす美しく、便利で、ぴったりの形を発見し、作り出します。世界中の工場の労働者と機械が、何千もの自動化されたプロセスでそれを実現しています。そうすることで、デザイナーは何百万人もの人々の日常生活の質感を決定するのに貢献しています。
しかし、オンライン生活の開花により、この王者の権力の一部に参入するための障壁は劇的に低下しました。突然、日常生活の素材を形成するのは単なるオブジェクトではなく、インターフェイスになりました。グラフィックデザインとUXデザインは、過去20年間で爆発的な成長を遂げました。したがって、再設計が急増しています。」

「良いデザインは基本的に共和主義的であり、ユーザーの意志を実現しようとしていることはわかっています。そこで(アメリカの)プロダクト責任者とマーケティング部門にお願いがあります。やめてもらえませんか?リデザインをやめましょう。イタレーション(iteration)をやめましょう。ボタンをいじるのをやめましょう。」

「デザイン時代の約束のひとつは、繰り返し作業を続け、A/Bテストを続ければ、考えられるすべての問題を解決し、人々が気づいていなかった欲求を満たし、社会進歩の黄金時代を先導しながら、無料サービスを収益化する確実な方法を見つけるユーザーエクスペリエンスにどんどん近づくことができるということです。しかし、私が長年にわたり適応してきた小さな調整をすべて振り返ってみると、これらの高尚な目標のほんの一部、あるいはより控えめな目標である、明確に前向きな変化を実現できたことさえ、思い浮かべるのが難しいです。」

「私はここで基本的に負け組の側にいることはわかっています。人々は変わり、彼らのニーズと欲求は変わります。したがって、私たちが作るものも変わります。しかし、デザインのためのデザインではなく、人間のニーズがユーザーエクスペリエンスの絶え間ない更新を推進していると私を納得させるのは難しいでしょう。」

ゼロからデザインするのは簡単ではないけど、既存のデザインに手を加えるのは「簡単にできる」とされています。
「リデザイン」が繰り返されるのは、それが「簡単にできる」からであって、必ずしも必要とされているわけではなさそうです。
そのようなデザインを期待されているなら、デザイナーの仕事は貶められることになるかも。

Can we please, please, please quit redesigning everything? >>

2024年12月28日 UX / UI

毎年恒例のトレンド予測。
今年は下記の5つのテーマで構成されていますが、タイトルから想像される内容とは必ずしも一致しないと思います。
1:躊躇の代償
2:親の罠
3:焦りの経済
4:仕事の尊厳
5:社会性の再野生化

虚偽、詐欺、有害なコンテンツ、などが蔓延する環境のなかで躊躇ったり焦ったりする人々と、ブランドが長期的な信頼を得るにはどのような考え方を持つべきかが紹介されています。
高度なテクノロジーが滅び去って昔のアナログの時代に戻った設定のSF映画のような感じもします。
とてもおもしろいトレンドですが、デジタルネイティブ世代が求めている「架空のノスタルジー」の「テクスチャー体験」もまた「代替」のような気がします。
また、テクノロジーをクリエイティブやブランディングの視点から肯定的に再解釈した予測も欲しいところです。

以下は気になった箇所の一部抜粋です。

「多忙な現代人の生活にとって、デジタルの相互作用は非常に理にかなっており、手軽さと利便性をもたらしている。人々がデジタルをより意図的に使うようになり、実世界での体験の喜びを増幅させるためにデジタルの使用バランスを見直すという変化が顕著です。人々や場所、文化とつながる体験からデジタルを遠ざけ続けるのではなく、デジタルを「サポートする役割」に割り当てています。」

「クリエイティブな領域では、デジタルは体験の代替ではなく、それを補完する役割に戻りつつあります。」
「デジタルツールは、エンゲージメントを測定し、報酬を与え、可視化する強力な手段を提供するが、テクスチャー体験の感情的な豊かさを完全に再現することはできません。テクスチャー体験は、視覚的なものだけでなく、感情的な深みも提供します。」

「ブランドは、ブランド・プロミスの一環として、オフラインでどのように喜びを伝えるかを自問する必要があります。」
「ブランドは、顧客が質感のある対面の体験を求めているときに、デジタル以外の方法で顧客と真につながる方法を探す必要があります。多くのブランドがデジタルに重点を移している今、これは重要な差別化要因になる可能性があります。」

Accenture Life Trends 2025 >>

昨年のトレンド予測はこちら
【関連記事】AIで何が変わっていくのかをブランディングの視点から「Accenture Life Trends 2024」>>

2024年12月21日 アイデア

ホットリスト2025:同業者の投票による、最も人気のあるグラフィックデザイナー25人

それぞれのデザイナーの作品を見つけることができて、見てるだけで楽しいです。
グラフィックデザインのトレンドとしてもおもしろいです。

商業的な要件を満たそうというだけではなく、見る人を楽しませようというのが伝わってきます。
同業者から好かれるのがわかります。

Hotlist 2025: the 25 most popular graphic designers, as voted for by their peers >>

Pentagramはブランディングとデザインにおいて世界で最も有名な会社で、ポーラ・シェアは世界的に著名なグラフィックデザイナーです。
米国政府の戦略目標を文書化し国民が理解できるようにするためのプロジェクト「performance.gov」のウェブサイトをデザインするにあたって、MidjourneyとChatGPTを使ったことを堂々と表明しています。さらに、ポーラ・シェアはインタビューでAIの利用を肯定的に話しています。

「辞書にあるデザインの定義は「計画」です。これは自立したイラストレーターの仕事ではないという事実に基づいて計画を立てました。隔週で1500個のアイコンを描きたい人がいれば、そうすればいいのです。私たちは、手に入る最高のツールを使って、自分たちのアイデアを実現します。」ポーラ・シェア

これに対してSNSでは「恥を知るべきだ」「デザインではない」「政府はアーティストからの盗品を悪用した」という厳しい意見が見られます。

動画によれば、手描きイラストの要素から膨大なバリエーションのアイコンを制作するためにMidjourneyを利用したようですが、それほどの数の候補から適切に選び取るのは人間では不可能だと思います。「そのアイコンが何を示しているのか」という点で曖昧さや不安定さがあるようにも感じます。
また、文書のサマリーにChatGPTを使っているようですが「国民が理解できるようにする」というこのプロジェクトの根幹に関わる問題がありそうな気もします。

先鋭的であり続けるために間違いを犯すことを恐れないのは、デザイン会社として望まれる姿勢です。一方で、間違いであることがわかったら、それを正すこともデザインだと思います。

Pentagram | Performance.gov >>

Pentagram leads the new era of craft >>

尾竹国観「絵踏」

おもしろかったです。
岡倉天心と喧嘩して日本美術の外側に置かれてしまったそうで、そういう反骨精神のカッコよさのある「お騒がせアーティスト」だったのかも。
会場の入り口に展示されていた大作『絵踏』は、岡倉天心主宰のサロンに従属する作家たちを批判しているようにも見えて、胸のすく感じでした。

富山の薬売りのノベルティの版画がスタート地点になっていたのも興味深いです。
尾竹兄弟が得意としていた「ストーリーを描く」「人物を描く」のは、現代の広告美術でも大切なスキルとされています。
個人的には、後年の作品からも一貫して「鑑賞者を喜ばせよう」というサービス精神が見て取れます。

展示の最後にあった住友の当主との酔筆も、クライアントに気を遣う商業美術の人という感じでした。

特別展 オタケ・インパクト 越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム >>

2024年11月30日 アート

最初はSNSでの冗談かと思いました。
イメージビジュアルやメッセージにはどこか英国的な感じもしますが、新しいロゴはダイソンの高級ラインのようです。

Jaguarは2026年に500馬力以上の高性能GTの電気自動車を投入して、そのあとさらにSUVと高級リムジンを投入して、内燃機関から脱却していくそうです。

いくつもの自動車ブランドが電動化で成功するために変身したいと願っているようですが、
どんな文脈で、どんなルックスで、どんな態度をしていいか、わからなくなっているような気がします。
SNSでバズったことは大成功かもしれませんが、注目を集めようと奇妙な格好をした無様で惨めな印象です。

Jaguarのブランドサイト >>

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エリザベス・ララキはUI/UX分野の第一人者で、次回登壇するカンファレンスの主催者に経歴や顔写真などを提出しました。
プロモーションツールの制作過程で、レイアウトを変更して写真素材の矩形を変更するためにAIツールを使ったところ、シャツのポケットを消去して、胸元にブラが見えるような補正がされてしまったようです。
このエピソードを通じて、ララキさんがAIツールについて抱くようになった警戒感についての記事です。
UI/UXのエキスパートらしい考え方のような気がしました。

「AIは、女性のシャツはさらにボタンを外し、ボタンの周りに張りを持たせ、下にあるものを少し見せるべきだと考えたのです。」

「この奇妙なエピソードにもかかわらず、ララキはAIツールの普及に興奮していることを認め、ソーシャルメディア・マネージャーがこの手間のかかる作業にAIを使った理由を完全に理解している。」

「個人的には、AIにまつわる私の最大の不安、つまり、AIがどのように機能するのかが本当にわかっていないことを再認識させられた。何が入力されるかはわかっている。何が出てくるかはわかっている。その間に何が起こるのかは謎だ。」

「しかし、この経験は、なぜトレーニングデータが重要なのか、なぜツールの設計が重要なのか、そして最も重要なのは、なぜこれらのツールをどのように使うのかが重要なのかということに、私の目を開かせた。」

「ここで重要なのは警戒心だ。ララキがAIの 「破滅的外挿」と呼ぶような、SF的ストーリーの悪夢のようなシナリオに気を取られがちだ(念のため言っておくが、万が一そのような事態が起こったとしても、私は新しいロボットの支配者を歓迎する)。この話が力強いたとえ話になっているのは、一見無邪気だからだろう。カンファレンスの広告用のヘッド写真にちょっと手を加えただけ。ソーシャルメディア・マネージャーが賢いツールを使って時間を節約した。しかし、小さなことが重要なのだ。それらは、例えばロボットの侵略よりも簡単にレーダーの下をすり抜ける。奇妙な異常値が受け入れられるようになる。私たちの合理的と思われる感覚は変化する。」

AIツールは21世紀を方向づける素晴らしい大発明だと思っていますが、警戒するポイントが少し違っているような気がしています。
たかがプロモーションツールでも、そこでデザイナーが扱っているのは実在する個人の情報です。
AIに個人の情報を投げ込むことには、もっと倫理観があるべきと思っています。

スマホやPCの画面に向かっている時に無意識のうちに、自分がオーダーする側でスマホやPCを通して何かを受け取る気になっているなら、あなたが利用しているのはツール(道具)ではなくサービスです。
サービスを利用している時、そのサービスのレスポンスが速ければ速いほど、利用者は便利に感じて万能感を得て、そのサービスをリピートするようになるでしょう。
この万能感が利用者の倫理観を希薄にしているのかもしれません。UI/UXはこの万能感の演出をしているかもしれません。

また、プロモーションツールを制作するデザイナーも実在する個人です。
短い日程で変更に次ぐ変更が重なれば、倫理観を薄くして便利なAIツールを利用したくなるでしょう。
ここで警戒すべきは、SF的ストーリーの悪夢のようなAIツールではなく、そのような日程と変更になってしまった現実の要因でしょう。

We should worry that AI added a bra >>