ハンス・ウルリッヒ・オブリスト の講演。
アート、アーティスト、展示 を社会(ソサエティ)と結びつけていこうとする取り組みがエネルギッシュな感じ。
企業や産業とコラボレーションを通して、多くの人々に認識してもらおうということのようです。
偶然にでもアートに出会う「コンタクト・ゾーン」をつくることだそうです。

都市の中の研究施設を公開して展示する「オープン・ラボラトリー」のアイデアは興味深いです。
以下はYouTubeのライブを見ながらのメモです。間違ってるかもしれません。

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同じ展示を各地で展開するのは傲慢である。展覧会は各地の文脈で変化すべき。

グローバリゼーションや差別を展示としてどう扱うのか。
アートは独自の視点でこれらを扱う必要がある。グローバルでありローカルである。

オブリストさん自身の『do it』というプロジェクト

ティム・バーナーズ・リーの「This is for everyone」のメッセージを紹介。
ネットの中立性が失われることへの危惧へのメッセージだそうです。
これも現在のアートの在り方を示唆するアイデアのようです。

オブリストさんが手掛けているサーペンタイン・ギャラリーを通した、建築との関わりを紹介。

AIの時代には、美術館にもCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)が必要だそうです。
環境、音楽、についての専門のキュレーターを置く必要もあるとのことです。

マクルーハンの言葉に「芸術は早期警報システム」とあるように、アートは社会の行方についての警報システムであり、認知のトレーニングとしてなくてはならないもの。

現在の社会において、AIは最重要であり、見えないものにありつつあるので、これを見えるようにして警鐘を鳴らすアートを紹介。
Ian Cheng によるAIを活用した作品「BOB」
Pierre Huyghe
Hito Steyerl

Arthur Jafa 可視化と認知の重層

Luchita Hurtado

Studio Creole

影響された人物として、Edouard Glissant を紹介。
グローバリズムについての重要な思想のようで、「全世界論」「関係の詩学」という日本語の本があるようです。

インスタグラムでも手描き文字やドローイングのプロジェクトを紹介。

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多様なアプローチが多くの実例を挙げて紹介されて、平易な言葉で、わかりやすい講演でした。
年の初めからいいもの見た気がします。

YouTubeでのライブ中継 >>
https://www.youtube.com/watch?v=mF_HLoWBX9k

2020年1月5日 アート

目[mé]『非常にはっきりとわからない

ネタバレしないようにしますが、日本の現代美術の転換点になるような、とても重要な展示を見た気がします。
時間、偶然、行為、痕跡、主観などのテーマが、プログラミング的な感覚で、巧妙に組み上げられた印象。
この感覚が会場の若い世代にポジティブに受け入れられていることが感じられました。
作家と同世代くらいと思われる若い「オーディエンス」で込み合って、入場まで1時間並ぶことに驚きでした。

ここ最近、制作過程を剥き出しのまま展示することでコンセプトを明確にするような展示を見ることが多い気がします。それらの展示は若い世代に人気があるようです。流行ってるんでしょうか。
とてもいいことに思えます。

この展示についての論考を読んでみたいです。見に行ってよかったです。

千葉市美術館 >>

2019年12月24日 アート

ジャスパー・ジョーンズ の版画とドローイング『Usuyuki』展

ジャスパー・ジョーンズ の版画とドローイング『Usuyuki』展

歌舞伎の「新薄雪物語」から着想を得たシリーズだそうです。
ポップ・アートの大御所・ジャスパー・ジョーンズ と日本の関わりについてはじめて知りました。作品からも儚さや移ろいといった日本的な美意識や物語が感じられます。

Processing やP5.js の参考になりそうな造形でした。版画らしい均一さと、手で描かれた不安定さや偶然さの良さがありました。

あらためてジャスパー・ジョーンズの作品を好きになりました。

Jasper Johns: Usuyuki | Fergus Mccaffrey >>

2019年12月16日 アート

候補者4人 Lawrence Abu Hamdan、Helen Cammock、Oscar Murillo、Tai Shani が申し出て、審査員が同意しての結果だそうです。

「人々とコミュニティを分断し隔離する多くのものがある現在に、『集合的なステートメント』を作りたい。」
ということだそうです。

4人がそれぞれ携わるプロジェクト、アート、またその在り方にとって、相応しい申し出だったようです。
インターネット後の世界のアートの在り方について、誠実なステートメントな気がします。

Turner Prize 2019 >>

Turner Prize split four ways as nominees decide against a single winner >>

2019年12月4日 アート

Raoul_Dufy

優れた色彩感覚とセンスのいい描線に恵まれていれば、たいていのことは大丈夫。
そういう気にさせてくれます。

陽気でオシャレで軽妙洒脱という感じ。
テキスタイル・デザインよりも絵画がいいです。

いつの時代にも描線と色彩で魅了できるアーティストやデザイナーがいると思いますが、まさしくそういうアーティスト/デザイナーだったのでしょう。
しかも、その能力を絵画だけでなく多方面で活かし続けたようです。

ラウル・デュフィ展― 絵画とテキスタイル・デザイン ― >>
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/19/191005/

2019年10月27日 アート

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メディア・アート作品をはじめとする、現代のメディア環境における多様な表現をとりあげる、幅広い観客層に向けた展覧会だそうです。
ICCの展示が好きで年に何度か見に行くのですが、テクノロジーで変位する「視点」とか「触覚」というテーマが感じられて、おもしろいです。

最近のイベントや展示では体験型エンタテイメントっぽい企画が増えたような気がします。
チーム・ラボとかの影響かもですが、そこにいる人を喜ばせようとしすぎて、学祭の模擬店や祭りの夜店のような賑やかしになってしまってないか、展示企画をする人は気をつけた方がほうがいいかも。

オープン・スペース 2019 別の見方で | ICC>>

2019年10月21日 アート

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今年一番の期待の展示。展示全体に一貫したテーマが感じられて見応えありました。
最初の学生時代に油絵をやめるところから、制作技術と作品の意味について考えさせられるものがありました。

広い空間を濃密に満たしている感じのインスタレーションは圧巻。
体験型のエンターテイメントという感じでした。

個人的にはドローイングも良かったです。

塩田千春展:魂がふるえる | 森美術館

2019年8月28日 アート

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夏休みに相応しい展示でした。
「現代アートと巨匠たちのセッション」とタイトルにありますが、見応えあるのは現代アートのほうでした。

展示の趣旨も明快で作品が活き活きと見えました。
セレスト・ブルシエ=ムジュノの皿がぶつかり響く音、オリヴァー・ビアの音響、森の中のスーザン・フィリップス。
都内では味わえない静かさの中だからこその展示でした。

ポーラ美術館、初めて行きましたが、いいところでした。

ポーラ美術館 | シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート >>

2019年8月21日 アート

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写真をベースにした油彩の作品。以前から好きな作家さんでした。
展示されていた作品は個人蔵が多くて、本当の意味で売れている作家さんなのでしょう。
美術館での展示は10年ぶりだそうです。

15年以上前に大きめの一軒家のギャラリーで伊庭靖子の展示を見たことを覚えています。
ソファとテーブルのある豪華な居間の壁に「untitled」というシリーズ作品が展示されていて、紅茶をいただきながら作品を眺めることができました。
あたたかく日常的な空間の中で作品を見る、とてもいい展示でした。

そんな展示の記憶のせいか、作品が個人に売れていることがよくわかる気がします。
今回の展示もそうですが、作品が文脈に正しく展示されることについて適切な判断がなされている感じがしました。
「作品」が売れるようにするには、そういう感覚が大切なのかも。

伊庭靖子展 まなざしのあわい >>

2019年8月8日 アート

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日本での過去最大規模の回顧展だそうで、見応え充分でした。
「時間」「痕跡」「記憶」「儚さ」といったテーマを伴う社会性の強い展示でした。
全体に「死」のテーマがありグロテスクでもありますが、詩的でポップな要素も見てとれる感じでした。

たぶん、ずっと昔にボルタンスキーの展示を見て、それも「死」をテーマにした作品だった記憶があります。その作品のなかで「死」がフィクションのように演出されている印象があって、当時は個人的にとても嫌悪感があった記憶があります。
今回はそういった嫌悪感が一切なく、とても楽しい展示でした。
自分の感覚が変わったのか、たまたま当時はそう感じただけか、、もしかしたら全部記憶違いかも。

そういう不思議な感じが展示作品とシンクロするような、奇妙な感覚で楽しかったです。

クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime >>

2019年7月16日 アート