おもしろい広告の第2弾。
植物由来素材のハンバーガーのキャンペーン。コロナ禍の文化的混沌を描いた2021年の人気作の続編です。

赤ちゃんの名前の「マックス」は子供と犬のどちらにふさわしいか。
テキストメッセージのエチケットとして削除するべきか、しないべきか。
環境・健康への懸念として、水道水が安全でなく、ペットボトルが地球を破壊するなら、どうやって水分を補給するか。
などに悩む人たちです。
さらに、鶏肉を使わないのにチキンの味がするチキンナゲットやパテにまた混乱させられる・・・というものです。

クリエイティブディレクターの André Toledoのコメントです。
「昨年と同じトーンとムードを保ちたかったのです。しかし今回は、環境、人間関係、子育てという3つの関連するトピックを選びました。」

Burger King Finds Comedy in These ’Even More Confusing Times’ >>

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混乱した時代を描くバーガーキングのTVCM『Confusing Times』

80年代が帰ってきた、ベイビー

上の画像はどれも2021年の広告です。海外の広告グラフィックでは80年代のようなデザインがトレンドだそうです。
それもかなり本気で80年代のデザインになってるようです。
フォント、カラーだけでなく、VHSやエアブラシのような質感、さらには、広告表現としてのテーマや描かれるライフスタイルまで80年代になってるようです。

以下は抜粋です。

機能的な面では、2022年には洗練されたミニマルデザインは完全に過去のものとなっていることは言うまでもありません(これはデザイン誌ですから)。だから、80年代の美学への揺り戻しは、典型的な「20年トレンドサイクル」の一部であり、デザインに対しても、より最大主義的で意図的に不正確なアプローチに戻るのは、間違いなく自然なことなのだ。

パンデミックから2年が経ち、孤立した生活の倦怠感が、いつの間にか私たちを耽溺へと導いたようだ。エゴは消え、イドが入り、世界が燃えている間でも、タバコを吸い、好きなことをやっている。Chandelier Creativeのチーフ・クリエイティブ・ディレクター、マイケル・スカンロンが言うように。「Instagramを見る限り、40歳以下の誰もが霊芝スムージーをやめて、キャビアとマティーニを飲んでいるようです。なぜでしょう?外は暗く、私たちは皆、生きていると実感できるような喜びと機知をもう少し欲しているのです」。

しかし、80年代のデザインは確かに反響を呼んでいるが、この復活を後押ししているのは、コンデンスセリフへの愛着というよりも、むしろコンセプトとしてのノスタルジーであるようだ。デザイナーのStefanie Brücklerは、COVID-19や気候変動といった世界的な危機に対応するために、社会が80年代や90年代初期の「より良い時代」への憧れを抱いているのではないかと考えています。

現在27歳から42歳のミレニアル世代は、この80年代のエディトリアルな美学を現代のブランディングやキャンペーンに活用するクリエイティブチームの舵取りをしているのでしょう。これらの時代を直接体験していないZ世代にとっては、これらの時代(とそれに関連する美学)は、携帯電話もリモート教育もない、よりシンプルな時代として、深いロマンを抱いているのである。

ブランド戦略の観点からは、80年代のエディトリアルな広告は、ソーシャルメディアの「映え」において歓迎すべき変化であると感じることもある。このようなエディトリアル・コピー主体のレイアウトは、ウインクして商品を勧めるのではなく、「これこそ完璧だ、あなたも手に入れられる」という大文字の広告なのです。誰もがより良い生活を求めている今、私たちはブランドがそれを手に入れる方法を教えてくれることを望んでいるのかもしれません。

少し悲しい世界観ですが、おもしろい洞察です。
個人的な感想ですが・・・日本の広告表現は80年代からそれほどアップデートされてこなかったような気もしてます。

The ’80s Are Back, Baby >>
https://eyeondesign.aiga.org/the-80s-are-back-baby/

コロナ禍が終わったかのような演出は時期尚早かもしれませんが、おもしろいCM。
東京の街のようですが、なぜかロックダウンされたことになっていて、すべてフィクションで、すべてが冒頭のゲームの世界の続きような感じがしてきます。

また、最後はちょっと意外な終わり方になってます。
偶然がいっぱいの日常に戻っていく・・・ということなんでしょうか。

この楽曲の「Be My Baby」のプロデューサーであり「ウォール・オブ・サウンド」で有名なフィル・スペクターの今年1月の死去を思うと、また奇妙な感じです。

いろいろと現実感にズレがあって、外出できないコロナ禍の夏の夜の夢のようなCM。

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閉じられたシャッターに広告を掲出することで休業中のバーを経済的に支援するハイネケンのキャンペーン『Heineken Shutter ads』

Metaの最初のブランド広告。
Meta社内のCreativeXグループがDroga5と共同で制作したそうです。
アンリ・ルソーが1908年に描いた「虎と水牛の戦い」を3Dにして、ファンタジックな没入感で「これは楽しいことになるよ」というセリフで締めくくられてます。

これがMetaのビジョンであり将来のメタバースなのかもしれませんが、「デジタルなものはすべてアナログなものよりも自動的に優れている」という独善的な考え方だと批判されてるようです。

楽観的な演出は、SNSが若者にもたらした悪影響やfacebookが指摘されてきた多くの問題をすべて置き去りにしているとも受け取られているようです。

Z世代はバカにされてると思うかも。

A Classic Painting Becomes a 3-D Music Video in Meta’s Vision of the Metaverse >>

広告業界のレジェンドであり、ナイキの「Just Do It」を手掛けたアートディレクターでもあります。
82歳だったそうです。

1982年にオレゴン州ポートランドにダン・ワイデンと共同で設立したエージェンシーは、現在はニューヨーク、アムステルダム、ロンドン、東京、デリー、サンパウロ、上海にオフィスを持つ世界最大の独立系エージェンシーです。

If you know Nike’s Just Do It, you should know ad legend David Kennedy >>

コカ・コーラ『Real

2016年の「Taste the Feeling」以来、5年ぶりに新しいキャッチフレーズ。
いままでのコカコーラのコミュニケーションを踏襲した、コロナ禍でもつながりを持つことの必要性がテーマになってます。

マーケティング責任者によると・・・
「私たちは今、ターニングポイントにいます。この18ヵ月間、生活のあらゆる側面が破壊され、私たちは白黒の二元的な世界の見方に戻るか、世界をより良い場所にする手助けをするかという、一世代に一度の選択を迫られています。Real Magicは、私たちのユニークな視点を『抱きしめる』ことで、より人間的な方法を選択するムーブメントを起こそうとしています。」
とのことです。

瓶の形に沿って包み込むようなカタチに歪んだロゴは『ハグ』と呼ぶそうです。
また、CMに登場するのは有名なゲーマーだそうです。

困難な時代の今の若者に、希望を提示しようということのようです。

Striking poster campaign introduces Coca-Cola Real Magic tagline >>

在宅勤務が終わってオフィスに行く日常に戻るとき、お家のペットもストレス晒される・・・という、ペットショップのCM。
最初は人間のことかと思って、途中から犬のことだとわかって、犬の気持ちを理解する。うまい演出。

同じタイプの演出で、他にもこんなキャンペーン映像もありました。

気づかせて、共感させて、メッセージを伝える。いいCM。

As People Return to the Office, Petco Explores Pets’ Mental Health >>

ひとりの食事が多くなって、いつもポテトをつまみ食いする友達とマクドナルドで会うこともなくなって、迷惑だったつまみ食いも戻って来てほしい日常のひとつ・・・というメッセージ。

ミュージカル風に歌い上げてるのがいいです。コロナ禍のいい広告。

Quirky McDonald’s Canada ad celebrates the joy of friendship (and fries) >>

CAMPARIのキャンペーン。実写とAIを活用してフェリーニっぽいショート・フィルムをつくるようです。
どういうふうにAIを使って、どういう意味でフェリーニなのか興味深いです。
9月7日のベネチア映画祭でプレミア公開。

ちょっとデビッド・リンチっぽい感じもします。

Red Diaries Fellini Forward | Campari >>

フェリーニは多くのTVCMも手掛けていてCAMPARIのTVCMも制作していたようです。
Fellini’s Fantastic TV Commercials for Barilla, Campari & More: The Italian Filmmaker Was Born 100 Years Ago Today >>

早くもコロナ後の世界を描いています。

ワクチンが始まって、もう、コロナ後の生活スタイルに目を向ける時期ということのようです。
しかも、コロナ後に訪れる「混乱した時代」を広告として面白く描いています。

ジョーはパンツにワイシャツ姿でヘッドセットを使って会議をしながら冷蔵庫を開けます。
彼は自宅で仕事をしているのか仕事場に住んでいるのかわからなくなって混乱しています。

エマはマークとデートするよりも、マークのプロフィールを見て過ごすのが好きだということに気がついて混乱しています。

ジェイソンは現実の会話に出くわして、ミュートしたりカメラを切ったり、聞いている間にトイレに行ったりすることができずに混乱しています。

ジュリーはオフィスに出勤しますが、パジャマで働きたいと思って混乱しています。

この「混乱の時代」に対処しているさまざまな人々が登場します。

「今は混乱の時代です。バーガーキングのインポッシブル・ワッパーを食べるにはちょうどいいタイミングです。牛肉を使わずに作られたワッパーは、まるで…ワッパーのような味がします。」

戻ってくる日常を祝福するのか、コロナ禍の喪失を悼むのか、企業のメッセージとしてやや扱いにくいと思いますが、そこはバーガーキングのいままでの広告のイメージだということなのでしょう。