「Calm Technology(穏やかなテクノロジー)」が復活。グッドデザインはそれを定着させることができるのか?

90年代のパロアルト研究所の「ユビキタス・コンピューティング」から発展したテクノロジーと人の穏やかな関係性を目指した「アンビエントコンピューティング」の理想と、現在のスマホがもたらしたUXの現状についての記事です。
90年代のビジョンが蘇る感じです。「アンビエントコンピューティング」の視点から見たときに、現在のスマホ社会がどう見えるのか、なかなか興味深いです。
そしてまた、デザインが間違いをしているという気がしてきます。

2007年頃に読んだ「アンビエント・ファインダビリティ」という本を思い出しました。
あの本がこういうアイデアを下敷きにしていたことを初めて知りました。いままた、こういうアイデアが必要とされているようです。

以下は、部分的な引用です。おもしろいです。

1990年代半ば、米ゼロックス パロアルト研究所の研究者グループは、情報の波が押し寄せる中、私たちの脳を守るためにはどうすればよいかを考えていました。彼らのアプローチを「Calm Technology(穏やかな技術)」と呼び、その主な目標は、テクノロジーがどこにでもある時代に、設計者や技術者が、いかにして私たちの注意をより少なく、より多くの注意を必要としないハードウェアやソフトウェアを作ることができるか、ということでした。

彼らが望んだ未来は、私たちが受け取った未来ではありませんでしたが、近年、テクノロジー企業が長年にわたって私たちの注意を収益化することで与えてきたダメージの一部を回復させるため、落ち着いたテクノロジーの古い原則が新たに復活しました。

「アンビエントコンピューティング」の初期の例は、Calm Technology の力についての重要なポイントを証明しています。すべての情報がすぐにあなたの注意を引く価値があるわけではありませんが、情報は必要なときに必要なだけそこにあるべきなのです。さらに重要なのは、人間はテクノロジーといつ、どのように関わりたいかを決めるべきであり、その逆ではないということです。

これは、ブラウンと彼のチームが当時積極的に考えていなかったことです。「私たちは、テクノロジーの良い使い方についてはロマンティックに考えていましたが、テクノロジーの悪い使い方については真剣に考えたことがありませんでした」と彼は言います。「もちろん、問題の一部は、今日のデジタルツールが複雑になっていることですが、それは、私たちが常に何かの方法ですべてのものに広告を重ね合わせているからです。・・・」

人々は、画面に釘付けにされた目を維持するために意図的に作られた説得力のあるデザインの選択のおかげで、彼らのスマートフォンやアプリに ”中毒 ”になった。民主主義は衰退しました。私たちの家は、私たちが注意を払うことを要求するデバイスで溢れています。

「Calm Technology(穏やかなテクノロジー)」の核心的な信条である「ユーザーの時間と注意を尊重してデザインされたプロダクト」は、イメージ回復を狙う企業のマーケティングに最適なコンセプトです。

「私たちはテクノロジーが問題を解決するとは考えていませんでした。私たちは常にテクノロジーは物事を複雑にする要因として捉えていました。」

それでも、思慮深いデザイン、つまり冷静なデザインは探求する価値があります。そして人々はすでに始めています。Case氏は著書の中で、デジタル製品に「落ち着き」の感覚を吹き込むための実行可能なステップを概説しています

【元記事はこちら】
Calm Technology Is Staging a Comeback—Can Good Design Make it Stick? | AIGA Eye on Design >>

2020年7月9日 未分類

アメリカで最も権威のあるデザイン組織 タイプディレクターズクラブ が閉鎖

コロナ禍での財政難もあったようですが、白人中心で閉鎖的な組織運営は非難されてもいたようです。
下記のリンクのインタビューを見ると、すでに存続させる意思も薄くなっていたような印象です。

こういうデザイン組織はこれから難しくなりそう。

One of America’s most prestigious design organizations shuts down amid allegations of racism >>

Microsoft社員のためのeラーング「無意識のバイアス」

無意識のバイアスについて、それらが行動にどう影響するのか、職場でどう影響するのかについて理解するeラーニング。
社内向けのようですが、外部から閲覧できるようになってるようです。
すばらしい内容です。途中で流れるビデオもよく作ってあります。
Microsoftで働いてみたくなります。

MicrosoftのOSは世界中の言語をサポートしようとしていると聞いた記憶があります。
だれも平等にPCを利用できるようにするという使命を持って、もうすぐ失われであろう少数派の言語も含まれているとか。
そういうところは素晴らしいと思っているのですが、正直なところ、Microsoftの製品は積極的に好きにはなれません。

eLesson:無意識のバイアス | Microsoft >>

ミルトン・グレイサーが亡くなった

プッシュ・ピン・スタジオからの永年の活躍は、世界中のグラフィックデザイナーの憧れだと思います。
システムに則ったルールが重視されるビジュアルデザインの現状では、60年代や70年代にミルトン・グレイサーのやっていたことをもう一度参考にしてみるのもいいかも。

91歳だったそうです。

httpsMilton Glaser, Master Designer of ‘I ♥ NY’ Logo, Is Dead at 91 >>

【関連記事】

グラフィックデザインの神様、ミルトン・グレイサーのインタビュー映像 >>

ミルトン・グレイサーが語る、クラウド・ソーシングでデザインを決定することがどのようにデザインをダメにするか >>

ミルトン・グレイサーのインタビュー映像「あなたは、義務としてデザインしているのか、それとも自然な習慣としてデザインしてるのか?」>>

2020年6月29日 デザイナー

IDEOがWhite Guilt(白人の罪悪感)を表現したインスタグラム投稿を謝罪

IDEOの有名なメソッド「デザイン思考」についても、デザインによる問題解決の大部分が白人のアプローチであると指摘されているそうです。デザイン産業の構造についても批判されているようです。

IDEOがツイッターに掲載した謝罪文は、「制度的人種差別はデザインによるものです。」という言葉で始まっています。これは重要なことだと思います。
正直なところ、自分がこの問題を正しく理解できているか自信がありませんが、いま起きている社会の変化のあとには、20世紀からのデザイン論は生き残れないのかも。

以下はツイッターに掲載された謝罪文です。

制度的人種差別はデザインによるものです。黒人は何世紀にもわたってこの現実と共に生きてきました。ジョージ・フロイドが苦しんでいるのを見て、残りの社会が目を覚ますのに8分46秒かかるべきではありませんでした。

IDEOでは、社内でも、より広い世界でも、私たちは十分に耳を傾けていませんでした。この2週間、同僚や皆さんからいただいたコメントに感謝しています。

先週インスタグラムで反レイシズムのリソースを共有したとき、それは白人の罪悪感を中心にしたもので、それは間違っていました。私たちははっきりと言うべきだった。Black Lives Matter.(黒人の命を軽んじるな)

IDEOはデザインのリーダーとして問題の一端を担ってきました。私たちには、新しいシステムをデザインする一員としての責任があります。私たちの価値観、人間関係、そしてデザインそのものについて再検討するまで、私たちに成功はありません。

私たちは、完全に謙虚に立ち、白人の特権と向き合い、人種差別のシステムを維持するために私たちが社会化されてきた方法を学び直すために、会社として私たちの先にある長い旅路を認識しています。

私たちの旅のこの時点で、私たちはより公平な組織に向けて努力することを約束します。

IDEOのインスタグラム投稿 >>

IDEOのツイッター投稿 >>

【関連記事】
デザインを脱植民地化するとはどういうことか? >>

2020年6月24日 デザイン

東京都現代美術館『ドローイングの可能性』展

p5.jsに触れるようになって、ドローイングについての理解とか見識とかに確固たるものが必要な気がして見てきました。ひさしぶりの展覧会。

彫刻に根差した戸谷成雄のドローイング理論はとても興味深く、チェーンソーによる彫刻作品は空間とドローイングのつながりを理解できる明快さがありました。
草間彌生の50年代のドローイングは(本当は全然違うと思いますが)スクリプトによる描画の方法論のようでした。

なんだか勉強になった気がします。

ドローイングの可能性 | 東京都現代美術館 >>

2020年6月22日 アート

獄中の人が描いた、社会を破壊している企業のCEOのポートレート集「CAPTURED」

ビジネスで、環境、経済、社会を破壊する犯罪を暴くためのプロジェクトだそうです。
獄中にいる人が描いた、獄中にいるべき人のポートレート。
企業が犯した犯罪と、肖像を描いた作家が犯した犯罪を、並べて見ることができます。

米国では、大きな貧富の差によって司法が正しく機能しなくなっていることが問題視されているようです。

「企業は一般人なら誰でも投獄されるような犯罪を頻繁に犯しています」
「これらの企業犯罪は環境、経済、社会を荒廃させているにもかかわらず、犯罪を犯した企業は和解金を支払うだけで済むことが多いのです。これらの支払いは企業の収益にはほとんどダメージを与えず、ビジネスを行うためのコストとして予算に組み込まれています。」
「Capturedは、ビジネスの犯罪に光を当てます。」

ジョージ・フロイド事件への抗議行動で逮捕者が出たことを受けて、ソフトカバー版の売り上げの利益をすべてブルックリン保釈基金に寄付するそうです。

Support the Brooklyn Bail Fund With CAPTURED >>

CAPTURED people in prison drawing people who should be >>

2020年6月18日

アストンマーティンが「007 ゴールドフィンガー」の装備をつけたDB5を手作りで再生産

55年前にDB5を生産していた工場で、レストア専門チームによってほとんど手作業で制作されるようです。
しかも、映画「ゴールドフィンガー」に登場するDB5のガジェットたちが装備されてます。
ツインフロントマシンガン や タイヤスラッシャー(もちろんダミー)。
ギアノブの操作ボタン。
着脱可能な助手席ルーフパネル。
切り替え式のナンバープレート。
インパネにはレーダースクリーン。
運転席のドアには電話機があるそうです。

ただのオモチャではなく、クルマとしても本物です。
スチール製のシャシーに、アルミニウムのボディパネル。
294馬力の4.0リッター自然吸気直列6気筒エンジンに、後輪駆動の5速マニュアル トランス ミッション。
オリジナルと同じシルバーのボディカラーです。

1台生産するのに4,500時間掛かるそうで、価格は3億7千万円くらいだそうです。

aston martin crafts limited edition of james bond’s DB5 goldfinger | design boom >>

ヨーロッパ(たぶん英国)のいくつかのクリエイティブ・エージェンシーへのインタビューだそうです。
コロナ禍でクリエイティブの仕事にどんな変化が起こって、いままでとこれからはどう変わっていくのかを答えてくれています。
インタビューの内容からすると、よい変化が起こっている気がします。

1. お互いに気を配る
「私が気付いたことの一つは、人々がお互いに共感し合っているということです。離れていることで、ある意味では、社交的になったとも言えます。チームがお互いを気遣っているという実感があります」
「そのおかげで、クライアントとの距離も縮まりました。みんな一緒にこの状況に置かれています。会話には以前はなかったような温かみがあり、多くの人がこれを仕事との関係を変える機会と捉えているように感じます」

2. 企業文化
「ロンドンとリーズのスタジオスペースに戻り、それらを最大限に活用することを楽しみにしています」
「毎日のスタジオにアクセスできないということは、生産的なオフィスを作るための本質が問われます」
「クリエイティブな雰囲気の中で一緒に仕事ができることは、素晴らしいことでしょう」
「戻りたいのは場所だけではありません。自分たちの企業文化に戻るのが待ちきれないです」

3. 出張が減る
「この経験には確かにネガティブな面がありました」
「しかし、私たちは在宅勤務が完全に可能であることを証明しました」
「私が期待しているのは、業界がビデオ通話で簡単にできた会議のために長距離便を利用する必要性を再考することです。これは、危機からもたらされる可能性のある、地球にとっての利益の一つです」

4. オフィスでの誕生日ケーキ
「スタジオとして、私たちはより直感的かつ柔軟に仕事をしなければなりませんでした。同じ部屋で仕事をしていないと、共同作業をするのは非常に難しいと思っていましたが、私たちはそれに適応しています。」
「とはいえ、物理的なオフィスに戻ることをとても楽しみにしています」
「ズーム通話ではまだ世間話をすることはできますが、それは確かに同じではありません。残念ながら、Zoomはチームの誕生日を手作りのケーキで祝う代わりにはなりません」

5. より良いメンタルヘルス
「間違いなく、対面での交流を切望していますが、リモートで仕事をすることで、より柔軟なエージェンシーとなり、生産性も向上しています」
「このような状況になったことで、自然とウェルビーイングが重視されるようになり、全員のメンタルヘルスに配慮するようになりましたが、これは良いことです。私たちはより健康的なランチを食べ、机から離れて昼間の散歩をするようにしています」

6. 新しいマインドセット
「エージェンシー全体のコミュニケーション、サポート、共感のレベルは、信じられないほど強力でした」
「人間関係が深まり、社員の連帯感が強まっているのを見ました」
「リモートワークによって、喧噪を離れて、熟考する時間が得られました。それは自分のためだけでなく、お互いのための時間です」
「我々はこのマインドセットを携えてスタジオに戻るようにします」

What to expect from post-pandemic work culture in the creative industries | CREATIVE BOOM >>

英語でよくわかりませんが、かっこいいです。
60年代のイギリス最先端のカッコ良さ。
小道具もおもしろいです。

裾野にできる未来都市も数十年後にはこんな感じに見えるのかな。

2020年6月8日 映像・映画