Apple Vision Pro とタイポグラフィ

Apple Vision Pro でタイポグラフィがどのように変わっていくのか、Monotype社のフィル・ガーナムさんのインタビュー記事です。
Apple Vision Pro を使ったことはないですが、視覚メディアの変化としてタイポグラフィにも影響を及ぼすことになるようです。
日本語の場合はどうなんでしょう。

以下は興味深い箇所の抜粋です。

タイポグラフィ体験の全領域がカスタマイズ可能になる。

空間的なテキストには、瞬時にさまざまな背景に適応できるタイポグラフィが必要になる・・・「スティッキー情報テキスト」、つまり現実世界の物体に固定されたテキストは、パッケージ食品の栄養ラベルとして使用されたり、地域のリサイクル情報を表示したりすることができる。

ARの真のタイポグラフィ表現の可能性を掘り起こすのは、独立したクリエイターやブランドメーカーでしょう

Monotype社は、幾何学的なサンセリフ書体が拡張現実や仮想現実で流行するだろうと予測している。
この理論は、Monotypeと応用神経科学企業のNeuronsがフォントの感情性について行った最近の研究と一致している。

Apple Vision Pro を装着して活字を読む行為そのものが滑稽な気もするので、まったく違ったインターフェイスになるのかもしれません。
それでもタイポグラフィがなくなることはなさそうです。

The era of spatial typography is here >>

サービスとしてローンチされたのではなく、技術紹介として発表したものです。
テキストからAIで生成された動画はこれまでもありましたが、より一貫性のある動画を生成できるようです。

元動画を変換するのは楽しいツールになるかもしれませんが、テキストから生成される動画は著作権の問題もあって、仕事では使いどころがなさそうな気がします。
技術に詳しい人なら、また違う可能性を見つけるのかも。

「LUMIERE」ってネーミングは気に入りました。

Lumiere >>
https://lumiere-video.github.io/

DEPRESSION poster

DEPRESSION poster

DEPRESSION poster

ドイツの自殺予防財団Deutsche Depressionshilfeのポスターキャンペーンだそうです。
普通の日常を写したグラフィックのなかで、シンプルに、私たちの思い込みを指摘させられる演出が見事です。

手掛けたのはハンブルグの Grabarz & Partner

実際のうつ病の人を登場させるようなドキュメンタリーではなく、「あるフィクション」として演出することで、見る人が認識を見直すことを促すことに成功していると思います。
このメッセージに適切な演出のように思います。

New campaign challenges assumptions around depression >>

デザイン思考は期待外れだったのか

非営利団体や公共機関のデザインプロジェクトで活用されてきたデザイン思考が、期待されたような成果を上げられない理由を指摘しています。
そのうえで「批判的に考える」ことの重要性とその方法について説明しています。
企業活動のデザインに携わる人にも役に立つ気がします。

●プロジェクトには誰が関わっていて、どのような役割で参加しているか?
●プロジェクトの枠組みと範囲を誰が決めるべきか?
●どの成果を優先するべきか?
●誰に対して責任を負うのか?
●プロジェクトのインパクトはどのように測定されるべきか?
●持続可能な影響を支えるために、どのような資金調達方法とスケジュールが適しているか?
といった項目になっています。

「関係構築と信頼形成」「参加、報酬、規模、影響、資金調達」などのワードが印象的です。
「批判的デザイン思考を実践し、そのプロセスの目的、行動、影響について、深く考え、慎重に取り組むことをすすめたい。」
とあるように、企業活動のデザインでPDCAとは違うレベルのようです。

デザイナーとしての役割に迷うような時には参考なるかも。

デザイン思考は期待外れだったのか >>

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デザイン思考のベテランは問題解決のときに何を考えて取り組んでいるか >>

麻布台ヒルズギャラリー開館記念 オラファー・エリアソン展_00

麻布台ヒルズギャラリー開館記念 オラファー・エリアソン展_01

麻布台ヒルズギャラリー開館記念 オラファー・エリアソン展_02

麻布台ヒルズギャラリー開館記念 オラファー・エリアソン展_03

麻布台ヒルズ

自然現象の要素を詩的に鑑賞に導く方法が見事だと思います。
コンセプト、手法、形態が美しく一貫していて素晴らしいです。

オラファー・エリアソンのスタジオではキッチンと食事も作品や活動の重要な一部とされていて、展示とコラボして、スタジオ・オラファー・エリアソン・キッチン のカフェ「THE KITCHEN」も期間限定でオープンしてるようです。

麻布台ヒルズはまだプレオープンの状態でしたが、華やかな商業施設になりそうでした。
へザウィック・スタジオのデザインは、ちょっとレトロで味がある印象でした。

麻布台ヒルズギャラリー開館記念 オラファー・エリアソン展 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期 >>

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「へザウィック・スタジオ展:共感する建築」森美術館 >>

2024年1月6日 アート

10のグラフィックデザイン・トレンドが紹介されています。
AIや機械学習の登場でグラフィックデザインは大きな変化に直面していて、デザイナーには対応と適応が求められているそうです。
ほかにも、ビジュアルイメージやカラーリングのトレンドについても紹介されています。

1.AIアシスタント
2.余白を埋め尽くすデザイン
3.リードガラス効果
4.バービーピンク
5.鮮やかなカラーリング
6.ドット・グラフィックス
7.ピクセルの再発見
8.自然志向のデザイン
9.抽象的なグラデーション
10.グリッドと可視化されたボーダー

グラフィックデザイナーの仕事がAIで置き換えられるような気はしませんが、グラフィックデザイナーに期待されることが今までと違ってくる気がします。
グラフィックやショートムービーに、AIをうまく利用できるようになる必要がありそうです。

他のトレンド予測にも、ハッピーで鮮やかなカラーリングやグラデーションの流行は、多様性や多文化のシンボルというだけでなく、戦争や侵攻などの不確実な時代に望まれているとありました。鮮やかなカラーリングは刺激をもたらすためのものではなく、消費者の心理を慰めるためのようです。

ドット、ピクセル、ボーダーなどの90年代デジタルの質感もトレンドのようですが、正直なところ、もっとクリエイティブなトレンドがあっていい気がしました。

詳しくは下記へ

Graphic Design Trends 2024 – The Great Reset >>

鈴木英人イラストレーション展_01

鈴木英人イラストレーション展_02

鈴木英人イラストレーション展_03

「湘南ビーチFMマガジン」の表紙を描いているそうです。湘南ビーチFM開局30周年記念での短期間の展示です。

80年代を代表するビジュアルイメージが、湘南ビーチFMによく似合っています。

原画もいいですが、印刷されてこそのイラストレーションだという気がしました。
神奈川県逗子市にお住まいで、自分の住む地域に根ざした仕事を続けているというキャリアには、憧れるものがあります。

湘南ビーチFM開局30周年「鈴木英人イラストレーション展」 >>

Does Web Design Matter ?

長くウェブデザインに携わり、クリエイティブ・ディレクターでデザイン・システムのコンサルタント会社の経営者でもあるダン・モールさんのブログです。
ウェブデザインを取り巻く環境が変わってきたことについての記事です。共感できるものがあります。

以下はいくつか抜粋です。

「最近の数年間は、ウェブサイト制作に費やす時間はかなり減っている。ウェブサイトを制作するチームを管理するようになり、私自身の手仕事が減ったという意味だけではない。それもありますが、概してプロジェクト自体が小さくなっています。」

「デジタルデザインは常に刹那的だ。新し物好きの私は、そこに惹かれた(そして今も惹かれている)。しかし、誰かが0.5秒でスクロールして通り過ぎるようなアニメーションに6週間も費やすのは、何か違う気がする。」

「最初の頃は、ウェブデザインのミシュラン星付きシェフになろうと思っていた。・・・いくつかの食事はファーストフードであった。しかし、ほとんどの食事はシンプルでおいしい家庭料理だった。新聞の批評を書くようなものではないが、ほとんどのゲストは満腹で幸せだった。」

「ミシュランの星を獲得したウェブデザイナーの市場はあるのだろうか?私が間違っていることを願うが、市場は縮小していると思う。」

記事の最後は「楽しみのため、そして芸術のため。」と締め括られています。

たしかに、ウェブデザインは過渡期を迎えていると思います。これは市場が縮小しているのではなく、求められることが変わってきている気がします。
ウェブサイトが訴求や拡散の役割を担うことは少なくなったと思います。SNSがその役割を担ってきましたが、期待外れだったり、弊害もありました。
これからのウェブサイトは、ブランド、製品、サービスを中心にした、小さくて信頼の置けるコミュニティを形成する役割を担うのかもしれません。

Does Web Design Matter? >>

1969 - 2023 PARCO広告展

1969 - 2023 PARCO広告展

1969 - 2023 PARCO広告展

80年代のパルコの広告は広告グラフィックの特異点だったと思います。
企業が発信する「難解」や「アヴァンギャルド」なメッセージがブランディングとして成立していた時代です。
ものすごくかっこいいです。
すでに会期終了していますが、今回の展示を見ると、どの時代も一貫してビジュアルは、明るく、楽天的で、力強く、ポップだったこともよくわかります。

ブランディングとして捉え直すと、また違った見え方になるかも。

「パルコを広告する」 1969 – 2023 PARCO広告展 >>

2024年のUXデザイン トレンド

AIの登場によって業界が崩壊に向かっているかのようなレポートです。
それでも人間中心であろうとするのは大切なことに思えます。

下記の5つのテーマについて「デザイナーにとっての意味」「チャンスはどこにあるか」「心構え」が書かれています。
01.自動化:AIはあなたを引き上げ、あなたを押し出す
02.飽和:縮小するチーム、縮小する力
03.コモディティ化:ベルトコンベアのデザイン
04.金融化:ユーザーフローからキャッシュフローへ
05.崩壊:ユーザーの信頼は有限な資源

どんな分野でもデザインが重要であることは変わることがないと思いますが、デザイナーの重要性は低くなっていると感じます。デザイナーは供給過多で成果物としてのデザインに新規性が感じられず飽きられているのではないでしょうか?
また、今後AIによって大量生産されるデザインやコンテンツは、価値あるものとしてユーザーに受け入れられるでしょうか?
他人の存在はこれからも私たちの意思決定に重要な役割を果たすことになるでしょう。
使いやすさを提供するだけのUXデザインから、人としての関係や責任を果たせるUXデザインになるのかもしれません。

以下は、いくつか気になった箇所の抜粋です。

「誰でもそこそこ良いデザインを作ることができる。すべてのインターフェイスが同じように見え始めたとしたら、それはデザインツールが設計通りに機能しているからだ。」

「企業は常に、根本的にコモディティ化されたデザインから生まれる予測可能性と安全性を好み、そのためにデザイン・システムに多額の投資をするのです。同時に、デザインプラクティスの自動化は一部のデザイナーを不快にさせることもある。」

「基本的なUIパラダイムが「解決された問題」になりつつあるのなら、私たちは解決すべきもっと深い問題に目を向けるべきだ。」

「私たちは本当に「顧客満足度の向上」を目指しているのか、それとも単に顧客サービスのコストを抑えようとしているだけなのか。ユーザーの利益を最優先に考えているのか、それとも単にビジネスの推進力として共感を利用しているだけなのか。」

「会社の数字を理解し、それをストーリーに活用する。ビジネス用語を学び、プレゼンするデザインと、それがどのようにビジネスを促進するのかを結びつける。しかし、組織における自分の価値を証明するために、決してガス抜きをしてはいけない。勇気を持って、人間として、人間のためにデザインすることを忘れないでください。」

「デザインを決定する際に主にA/Bテストに頼っている企業は、そうした欺瞞的なパターンを最も成功したものとして選ぶことが多いのだ。強制的なペイウォールは、あらゆるコンテンツプラットフォームにとって当たり前であり、一方でサブスクリプションサービスは解約が不必要に困難である。かつては無害と考えられていたソーシャルネットワークは、ヘイトスピーチから陰謀論に至るまで、結果に対する説明責任なしに有害な声を助長する。」

「VRやARのような新しい情報エコシステムや、AIがもたらす製品の津波は、デザイナーに再教育を要求し、他人を傷つけることのない製品決定を下せるよう、常に一歩先を行くことを求めている。準備をする最善の方法は、私たちの周りで起こっている技術的、法律的、社会的な発展について、積極的に情報を得、教育を受ける努力をすることです。」

The State of UX in 2024 >>

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