尾竹国観「絵踏」

おもしろかったです。
岡倉天心と喧嘩して日本美術の外側に置かれてしまったそうで、そういう反骨精神のカッコよさのある「お騒がせアーティスト」だったのかも。
会場の入り口に展示されていた大作『絵踏』は、岡倉天心主宰のサロンに従属する作家たちを批判しているように見えました。

富山の薬売りのノベルティの版画がスタート地点になっていたのも興味深いです。
尾竹兄弟が得意だった「ストーリーを描く」「人物を描く」感覚は、現代の広告美術でも大切なスキルです。
個人的には、後年の作品からも一貫して「鑑賞者を喜ばせよう」というサービス精神が感じられました。

展示の最後にあった住友の当主との酔筆も、クライアントに気を遣う商業美術の人という感じでした。

特別展 オタケ・インパクト 越堂・竹坡・国観、尾竹三兄弟の日本画アナキズム >>

2024年11月30日 アート

最初はSNSでの冗談かと思いました。
イメージビジュアルやメッセージにはどこか英国的な感じもしますが、新しいロゴはダイソンの高級ラインのようです。

Jaguarは2026年に500馬力以上の高性能GTの電気自動車を投入して、そのあとさらにSUVと高級リムジンを投入して、内燃機関から脱却していくそうです。

いくつもの自動車ブランドが電動化で成功するために変身したいと願っているようですが、
どんな文脈で、どんなルックスで、どんな態度をしていいか、わからなくなっているような気がします。
SNSでバズったことは大成功かもしれませんが、奇妙な格好をした無様で惨めな印象です。

Jaguarのブランドサイト >>

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エリザベス・ララキはUI/UX分野の第一人者で、次回登壇するカンファレンスの主催者に経歴や顔写真などを提出しました。
プロモーションツールの制作過程で、レイアウトを変更して写真素材の矩形を変更するためにAIツールを使ったところ、シャツのポケットを消去して、胸元にブラが見えるような補正がされてしまったようです。
このエピソードを通じて、ララキさんがAIツールについて抱くようになった警戒感についての記事です。
UI/UXのエキスパートらしい考え方のような気がしました。

「AIは、女性のシャツはさらにボタンを外し、ボタンの周りに張りを持たせ、下にあるものを少し見せるべきだと考えたのです。」

「この奇妙なエピソードにもかかわらず、ララキはAIツールの普及に興奮していることを認め、ソーシャルメディア・マネージャーがこの手間のかかる作業にAIを使った理由を完全に理解している。」

「個人的には、AIにまつわる私の最大の不安、つまり、AIがどのように機能するのかが本当にわかっていないことを再認識させられた。何が入力されるかはわかっている。何が出てくるかはわかっている。その間に何が起こるのかは謎だ。」

「しかし、この経験は、なぜトレーニングデータが重要なのか、なぜツールの設計が重要なのか、そして最も重要なのは、なぜこれらのツールをどのように使うのかが重要なのかということに、私の目を開かせた。」

「ここで重要なのは警戒心だ。ララキがAIの 「破滅的外挿」と呼ぶような、SF的ストーリーの悪夢のようなシナリオに気を取られがちだ(念のため言っておくが、万が一そのような事態が起こったとしても、私は新しいロボットの支配者を歓迎する)。この話が力強いたとえ話になっているのは、一見無邪気だからだろう。カンファレンスの広告用のヘッド写真にちょっと手を加えただけ。ソーシャルメディア・マネージャーが賢いツールを使って時間を節約した。しかし、小さなことが重要なのだ。それらは、例えばロボットの侵略よりも簡単にレーダーの下をすり抜ける。奇妙な異常値が受け入れられるようになる。私たちの合理的と思われる感覚は変化する。」

AIツールは21世紀を方向づける素晴らしい大発明だと思っていますが、警戒するポイントが少し違っているような気がしています。
たかがプロモーションツールでも、そこでデザイナーが扱っているのは実在する個人の情報です。
AIに個人の情報を投げ込むことには、もっと倫理観があるべきと思っています。

スマホやPCの画面に向かっている時に無意識のうちに、自分がオーダーする側でスマホやPCを通して何かを受け取る気になっているなら、あなたが利用しているのはツール(道具)ではなくサービスです。
サービスを利用している時、そのサービスのレスポンスが速ければ速いほど、利用者は便利に感じて万能感を得て、そのサービスをリピートするようになるでしょう。
この万能感が利用者の倫理観を希薄にしているのかもしれません。UI/UXはこの万能感の演出をしているかもしれません。

また、プロモーションツールを制作するデザイナーも実在する個人です。
短い日程で変更に次ぐ変更が重なれば、倫理観を薄くして便利なAIツールを利用したくなるでしょう。
ここで警戒すべきは、SF的ストーリーの悪夢のようなAIツールではなく、そのような日程と変更になってしまった現実の要因でしょう。

We should worry that AI added a bra >>

2025年のデザイントレンド

クリエイティブ・ディレクター、エージェンシーの創設者、など業界の先見者たちに、彼らが考える2025年のトレンドについて話を聞いた記事で、10個のトレンド予測が紹介されています。

AIについての批判したり評判や判断を待っている時間は終わったようです。
AIの流行への反動として「フィジカル」や「クラフト」への回帰があるらしいです。
視覚的なデザインは、これまでのクリーンでミニマルなトレンドから、さらに大胆さや躍動感が求められるようです。
UIとしてはサウンドの使い方が見直されるようです。

10の項目は以下のとおり
1. AIは最終アウトプットへ
2. 物理的体験への回帰
3. クラフト・ルネッサンス
4. より多くの試行錯誤
5. デザイン・ライティングの台頭
6. サウンドが重要なデザイン要素に
7. 持続可能性が主役に
8. ミニマリストのマキシマリズム
9. 健康が新たなラグジュアリーに
10. 包括性は譲れないものに

以下はいくつか抜粋です。

「グラフィックデザインの大きなトレンドをあまり気にしないようにしています。社会がどこに向かっているのか、そして、重要なところでいかに有意義な影響を与えられるかに焦点を合わせています。とはいえ、仕事がどのように見えて、どのように感じられるかという点では、私たちは明らかに、コンピューターが登場して以来、テクノロジーにおいて最も大きな変革のひとつを迎えています。」

「AIはここ数年、テクノロジーに関する多くの話題の中心でした。しかし、ツールやアプリケーションの成熟度を考えると、もはや傍観する意味はありません。」

「AIは、プロセスやスケッチのための舞台裏のツールから、ブランド資産やコンテンツをリアルタイムで作成する実際の実行ツールへと移行するだろう。デザインにおけるAIの役割は、より直接的なものになり、アイデア出しから最終的なアウトプットへと移行していくだろう。」

「消費者は、大量生産品から脱却し、個人的な意味を持つユニークな手作り品を求めています。第二は持続可能性です。環境にやさしく倫理的な消費への注目は、手工芸のゆっくりとした意図的な生産と一致する。第三に、技術の進歩が伝統的な職人技と融合し、革新的でありながら本物のデザインを生み出すことです。」

「Canvaのような安価なAdobeの競合製品は、誰もがデザイナーである、あるいはデザイナーであると思っていることを意味します。その結果、豊富なコンテンツが作成されています。しかし、これらのプログラムはテンプレートに大きく依存しているため、出てくるものはすべて同じように見えます。コピー・オブ・コピー・オブ・コピーのこの海で、新しいアイデアや美学を見つけるのは難しくなっている。AIがこのようなコンテンツをすべて学習することで、同じようなものが今後さらに増えていくことが予想されます。・・・私たちは、アルゴリズムが必然的に提供し続ける鮮明でクリーンで当たり障りのないものに対抗するために、より多くのカオス、より多くのマキシマリズムを期待しています。」

「サウンドファイルは、ユーザーがナビゲートしたり選択したりする際のUIサウンドまで、様々な方法で実装できます。・・・これまで、ウェブサイトでの自動再生は避けるべきだと考えられてきました。しかし、今後、サウンドを重視するウェブサイトは、保存されたユーザーの好みに基づいて、オーディオを再生するかどうかのオプションを実装するようになると思います。」

「パッケージは俳句のようにミニマルになり、足跡をほとんど残さない素材で作られ、デザインは、まるで地球そのものが深呼吸して満足したかのような穏やかさを醸し出すようになるかもしれない。」

「誰もがハイエンドでデータ主導の健康サービスをプレミアムで提供する機会を狙っている。重要な焦点は?見えないものを見えるようにし、未来を予測可能にすること。」

Design trends for 2025: creative leaders share their vision for the future >>

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2024年11月10日 アイデア

『テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする』会場

『テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする』スケッチ

『テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする』会場

それほど好きなデザイナーではなかったのですが、おもしろかったです。
商売上手なのは素晴らしいことです。
それは、良いデザイナーだという証明です。

グラフィックデザインや広告についてもそうですが、60年代のロンドンでは奇跡が起こっていたような気がします。
戦後復興の、住環境、都市生活、都市開発の大きな隆盛に乗ったビジネスマンといった感じもあります。

「デザインする」仕事ではなく「何をデザインするのか」をビジネスにした気がします。
人の暮らしと社会におけるデザイナーの役割を押し広げたと思います。

彼の考え方がへザウィック・スタジオに引き継がれているというのはおもしろかったです。

テレンス・コンラン モダン・ブリテンをデザインする >>

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2024年11月2日 デザイナー