Adobeの共同創業者 ジョン・ワーノック

この世界のドキュメンテーションとコミュニケーションを変えた天才。グラフィクデザインをデジタルにした人です。

彼もまた1970年代後半にゼロックスのパロアルト研究所にいたそうです。
そこでInterpressを開発しましたが、ゼロックスでは商業化されず、1982年に同僚のチャールズ・ゲシュケとAdobeを設立してポストスクリプトを開発したそうです。

ゼロックスで実現できずに彼が諦めていたら、この世界はどうなっていたでしょう。
イラレ以前のグラフィックデザインの仕事には専用の機材と技術と広い部屋が必要でした。
グラフィックデザインは小さくなってコモディティ化したのかもしれません。

サブスクになってからのAdobeは好きになれないですが・・・、グラフィックデザインの他にもデジタルデータを利用するデザインに関わるほぼすべての人はこの人の恩恵に与っているでしょう。

Remembering Adobe’s John Warnock >>

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アラン・ケイが語る、1970年代のゼロックス パロアルト研究所で起こったデザインの魔法を再現する方法 >>

「アートの未来はAIが握ってる」

興味深い記事です。
AIのアウトプットを人が作った作品として提示するのは、パロディだとしてもやめた方がよさそうです。

カリフォルニアで3人のアーティストがStable Diffusion、Midjourney に対して
「何百万人ものアーティストの権利を侵害する21世紀のコラージュツールであり、作品市場に実質的な悪影響を与えている。」
として訴訟を起こしているそうです。

裁判で著作権侵害を主張するには1対1で作品を比較して検証することが前提になっていて、現在の著作権法はAIによる著作権侵害に対処する能力を備えていないという意見があるようです。

現在のところ、AIを使って制作された作品には著作権は認められないとされています。
こういったAIプラットフォームを運用することの合法性についても疑問視されているそうです。

以下は記事からの抜粋です。

「現行の(米国の)著作権法は、誰が何を所有するかという概念を容易に決定できた時代に制定されました。
影響力とアウトプットがより曖昧なAIの時代に、創作と所有権の問題は複雑になっていて、この裁判を難しくしています。」

ある弁護士によると・・・
「1年前と比べると、巨大なテック企業が同意もクレジットも補償もなしに、人間が創作した作品にAIをトレーニングさせることには法的・倫理的問題があるという考えが、より広く受け入れられていると思います。・・・最終的には、生成AIは人間が作成したデータに依存するため、これらの企業はクリエイティブ産業と協力することを好むと思います。AI企業が人間のクリエイターを破産させれば、彼ら自身もすぐに破産するからです。」

また別の弁護士は・・・
「この集団訴訟の理論は、アーティストにとって非常に危険です。たとえ最終的な結果が実質的に類似していなくても、他人の芸術のいかなる側面でも自分の作品に取り入れ二次的著作物を創作したと裁判所を説得すれば、好きなアーティストの目の描き方をコピーするようなありふれたことでも、法的な危険にさらされる可能性がある。」

また、ゲッティイメージズも
「ゲッティイメージズの知的財産を驚異的な規模で堂々と侵害している 」
としてStability AI社を法廷に提訴しているそうです。

いつか、制作物はNFTになってることが必須になって、作者が実在の人間であることを証明することも必要になるのかも。

The future of art is in AI’s hands >>

Judge Appears Likely to Dismiss AI Class Action Lawsuit by Artists >>

メゾン マルジェラのインスタレーション『シネマ・インフェルノ』

メゾン マルジェラのインスタレーション『シネマ・インフェルノ』

90年代っぽいイメージでおもしろかったです。
『シネマ・インフェルノ』という短編映画の世界観がインスタレーションで再現されていて、映画の中に登場する服も展示されていました。
詳しく分からないのですが、展示されている服の素材や作り方のクオリティはスゴそうでした。
映画は別のフロアの鏡貼りの部屋で上映されていました。

映画も展示も90年代のU2の ZOO TV を思い出して懐かしくもありました。
映画、服、演劇、身体、など多くの要素を扱った演出とまとめ方がおもしろかったです。

ラグジュアリーなこの服は、物語を纏っていて、ひとつのファンタジーなのだということのようです。
会場の入り口や、映画が上映されている部屋へ穴の中に入っていくような演出、ウサギのモチーフ、足跡を追う形式の展示など、不思議の国のアリスなのだろうと思います。

「服作りのプロセスで、私は感情に訴えて記憶を生成します。それがドレスメーキングとストーリーテリングの本質的な関係を生み、私のオートクチュールへのアプローチの基盤となっているのです。」ジョン・ガリアーノ

Cinema Inferno >>

frog Design のUIキット「メタクロシス」_01

frog Design のUIキット「メタクロシス」_02

frog design を創設したエスリンガーは反骨精神の人です。
「『機能に従う』はダメなデザインの言い訳になり下がってる。・・・人は自身の感情で納得したいんだ。合理性に納得したいのではない。」
とも言っています。

UIキットは便利で、疑うことなくコスト削減になりますが、UIキットの利用と運用をルール化することは、社内の物の見方を平準化してしまうような気もしています。型破りな物の見方を抱えているデザイン組織の方が魅力的な気もします。

やや関係ない話ですが・・・
多様な製品やサービスを網羅するサイトを構築するときに、それらの多様さを包括できるデザインを考えることに夢中になったことがありました。多様さを包括して一貫性があり、さらに魅力的なブランドイメージを備えたデザインは難しいです。
クライアントからはデザインの完成度や統一感よりも、
・それぞれの製品やサービスに関する情報がサイトから頻繁に発信されるようになること
・その情報発信に各部門の関係者が主体的に関与できるようにすること
が重要であると伝えられました。これは発想の転換になりました。
素晴らしいデザインがサイトに掲げられていることよりも、多くの人の関与を受けながら動き続けていることの方が大切で、デザインはその役に立つことができると思えました。

創設者の思想をベースにしている「メタクロシス」のデザインは素晴らしいと思います。
以下は引用です。

工業デザイナーのハルトムート・エスリンガーは、デザイン会社の公式両生類マスコットにブラジル産のアマガエル、フリードリンを選びました。

メタクロシスとは、一部の動物が持っている、周囲の状況に応じて色や外見を変える能力のことです。カエルのデザイン理念の中核をなすのは、柔軟性、適応性、そして生存のための変化へのコミットメントです。

デザイン・システムは、製品組織ではしばしば不評を買うが、創造性の高い組織ではなおさらです。日々の仕事の目的や性質が革新的であり、既成の秩序に逆らうことでさえあるクリエイティブな人々が、デザイン・システムに従うことを提案されたとき、抵抗にあうことがあるます。

システムに従うことは健全な懐疑心を持って扱われることがあります。

「デザイナー、エンジニア、QAスペシャリストを組み合わせてボタンをデザイン、製造、テストするとしよう。これらのスタッフの人件費が1時間100ドルで、このレベルの品質でボタンをデザイン、製造、テストするのに、この3人のチームを合わせて200時間かかるとすると、ボタンのコストは20,000ドルになる。もし、あなたの企業が50のチームでそれぞれボタンを作っているとすれば、良いボタンを作るために100万ドルのコストがかかることになる。」

最新かつ最高の機能(自動レイアウト、バリアント・プロパティ、内蔵のインタラクティブ・アニメーション)をすべて備えた、ホワイトラベルのFigmaコンポーネント・ライブラリの作成を考えていました。

Project Metachrosis: How We Turned a UI Kit into a Global Movement >>

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Frog Design の創設者 Hartmut Esslinger のデザイナーへの5つのアドバイス >>

ハルトムット・エスリンガーによる「俺がスティーブ・ジョブスにデザイン第一主義をどうやって教えたか」

2023年8月6日 UX / UI