グラフィックデザインの倫理的リーダーだったケン・ガーランド

ケン・ガーランド

ケン・ガーランド 
 first things first

ケン・ガーランド grahics handbook

今年5月に92歳で亡くなったケン・ガーランドは、1960年代のロンドンの「スウィンギング・シックスティーズ」の時代から活躍してきた英国のグラフィックデザイナー。
1964年に発表した「First Things First」というマニフェストや、1966年の著書『Graphics Handbook』で知られています。
2016年のインタビュー記事が公開されました。
グラフィックデザインの思想的な指導者というイメージですが、謙虚で実務的な人物でもあったようです。

以下は抜粋です。

「1920年代、1930年代にドイツやスイスで行われていたデザインは、50年代に英国の我々が取り組んでいたことよりもはるかに進んでいた。私たちは、タイポグラフィ・デザインの夢の国に閉じこもり、前進していないと感じていました。私たちが追いつかなければならない仕事があることはわかっていました。ある意味では、私たちがやったことは、ヨーロッパやアメリカのベストと思われるものを模倣したものでした。」

「私と一緒に学んだ同僚の多くは、すべてをサンセリフ、できればヘルベチカにしたがり、私にはない絶対主義的な傾向を持っていました。私はすでに、グラフィックデザインへの一途なアプローチという考えを抑えていました」

スウィンギング’60sは、ロンドンのデザイン事務所の多くが急速に拡大した時代でしたが、ガーランドは常に小規模でありたいと考えていたそうです。
Ken Garland & Associatesという社名で、最大時に4人のアソシエイトを抱えていましたが、彼の平等主義的なポリシーで、プロジェクトは常に平等に評価され、大規模なクライアントを求めることはなかったそうです。

「常にデザインに関わっていたいと考えていた。秘書的な仕事をする人はいなくて、みんなデザイナーで、デザインをしていました。」

「私たちの世代は、デザインが好きで好きでたまらなかったのだと思います。確かに、大きなデザイングループを必要とするクライアントもいますが、小さなグループでできることは素晴らしいことです。」

KG&Aは常に彼の自宅にオフィスを構えていたため、規模を小さくすることができましたが、実は毎日の通勤を避けたかったことが主な動機だったそうです。

966年の最初の著書『Graphics Handbook』は、実用的なアドバイスが紹介されています。
表紙にはガーランドの印象的なタイポグラフィが使われていますが、この本はガーランドが自分の作品を人前に出すための本ではありません。

「デザイナーが自分の作品を見せて自慢話をするための本があります。私が考えていたのは、仕事をするための本でした。」

この『Graphics Handbook』は約3万部売れ、60年代後半から70年代の学生に、デザインの手法だけでなく、デザインのプロセスやデザイナーに必要なコミュニケーションスキルなど、貴重な指導やアドバイスだったそうです。
お金のない学生に考慮して、参考文献に「必須」「重要」「単なる有用」のマークを付けたそうです。

ガーランドは、グラフィックデザインの思想的なリーダーでしたが、『Graphics Handbook』では、別の側面についても触れています。

「それは、デザインに対する私の異なる姿勢です。ひとつは、何が要求されていて、どうすればそれを満たすことができるかという、事実に基づいた姿勢。もうひとつは、現在のグラフィックデザインの使われ方に影響を与えている社会的要請は何か、そしてそれをどうやって我々の望み通りのものに変えることができるかということです。」

グラフィックデザインを自分の欲求や社会的衝動に合わせてどのように変えていきたいかは、1964年に発表された「First Things First Manifesto」に端的に表現されています。この中でガーランドは、急成長するグラフィックデザイン業界の倫理観として「より便利で長続きするコミュニケーションの形を優先すること」を提唱しています。消費主義と広告の氾濫に対する警告は、いまも多くの若いデザイナーにとっての試金石です。

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