AIで制作した短編映画『The Frost』と新しい映像制作

すべてのショットが画像生成AIによって生成された12分間の映画。
デトロイトの映像制作会社Waymark社による作品です。AIがもたらす不気味さや不完全さを「美的(aesthetic)」として捉えているようです。

「脚本を、OpenAIの画像生成モデルDALL-E 2に渡しました。このモデルが満足のいくスタイルで画像を生成できるように試行錯誤した後、DALL-E 2を使ってすべてのショットを生成しました。そして、静止画に動きをつけるAIツール「D-ID」を使って、目の瞬きや唇の動きなどのアニメーションを作成しました。」

「私たちは、写真の正確さを求める気持ちと戦うのをやめ、DALL-Eという奇妙な存在に傾倒し始めました。」

「DALL-Eが私たちに返してくれたものから、私たちは世界を作り上げました。奇妙な美学ですが、私たちはそれを素直に受け入れました。それがこの映画のルックとなったのです。」

「DALL-Eから、顔の感情的な反応など、ある種のものを得るには、少し苦労しました。しかし、ある時は私たちを喜ばせてくれました。目の前でマジックが起きているようなものです。」

20世紀の実験アニメーションのような、ちょっと好みのテイストになりそうな感じです。
キャラクターの風貌に一貫性がないのでストーリーが追いにくそう。あと、有名な映画のワンシーンや有名な俳優のような顔が登場するのは問題になりそう。

Waymark社は早く安くCM映像を作る方法を探している企業向けに、動画作成ツールを作っているスタートアップです。大規模言語モデル、画像認識、音声合成など、いくつかの異なるAI技術を組み合わせて、ビデオ広告をその場で生成するそうです。月額25ドルからだそうです。
1分程度のコマーシャルを数秒で作成できて、ユーザーは希望すれば、台本をいじったり、画像を編集したり、別の声を選んだりできるそうです。
作例はこちら >>

正直な感想としては、AIの映像を広告や宣伝に使うのは、その映像がどういう責任を果たさなくてはいけないかを考えれば、現実性はとても低いと思います。そういう提案をする映像制作者が信頼を得られるとも思えません。
でも、『The Frost』の続編もあるようですし、他にも実験的な作品はたくさん作られていくようです。

「絵文字やグリッチ効果に代表されるデジタルカルチャーのイメージとは一線を画すものです。新しい美学がどこから生まれてくるのか、とても楽しみです。ジェネレーティブAIは、私たちを映す壊れた鏡のようなものです。」

Welcome to the new surreal. How AI-generated video is changing film | MIT Technology Review >>

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2023年6月17日 映像・映画